Li金属負極を用いた全固体電池を作製 -25 ºC~120 ºCでの動作も実証

~ より幅広い環境でのリチウムイオン電池使用に期待 ~

ポイント

・材料間の連続的な相互反応で液相を生成し、焼結温度を250 ºC以上低減
・材料の構成元素に留意することで低温焼結とLi金属への安定性を両立
・優れたサイクル特性や広い温度範囲で使用可能な安全性を確認

概要

 酸化物電解質を用いた電池は、発火や有毒ガス発生のない安全性の高い電池です。しかしながら、本電解質は材料間を接合するために高温焼結(≥ 1000 ℃)が必要であり、電極材と電解質材が反応してしまい電池化が困難でした。当研究グループは、これまでに電解質材の一種であるLi₇La₃Zr₂O₁₂(LLZ)へ低融点焼結助剤をナノレベルで複合化することで、750 ℃での焼結を実現してきました。しかし低温焼結を促す焼結助剤の添加は、高容量で究極の負極材料と言われるLi金属に対する安定性を著しく低下させるという欠点がありました。
 株式会社デンソー(当時:九州大学大学院総合理工学府博士課程3年)の林真大氏、九州大学大学院総合理工学研究院の渡邉賢准教授、島ノ江憲剛教授らの研究グループは、新しい焼結機構を活用することで上記の欠点を克服しました。詳細な分析の結果、2種類の焼結助剤とCO2による連続的な相互反応により焼結を促進する液相を長時間保持することで低温での焼結が進行することを明らかにしました。この焼結機構を用いることで、Li金属に対し安定性の高い固体電解質が得られました。さらに、Li金属負極を用いた全固体電池を作製し、室温環境におけるサイクルと-25 ℃ ~120 ℃といった従来の有機電解液を用いた電池では使用できなかった温度範囲でも電池動作することを実証しました。今回の研究により、従来のLiイオン電池では、これまで使用ができなかった過酷環境への応用が期待されます。
 本研究成果は英国王立科学会誌「Journal of Materials Chemistry A」に2024年1月19日(現地時間)に掲載されました。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

抗酸菌における決定的な休眠誘導機構を発見

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