抗酸菌における決定的な休眠誘導機構を発見

~ 天然変性タンパク質による新規のDNA凝集メカニズム ~

ポイント

・結核や非結核性抗酸菌(NTM)症などの抗酸菌症は、難治性であり、投薬期間は半年から年単位に及ぶ。この根底に、休眠して薬剤パーシスター*2化する抗酸菌の性質があるが、休眠期に誘導される分子の解析が盛んに行われてきた中で、実際に休眠を誘導する分子は報告されていなかった。
・結核は人類史上最も多くの人命を奪ってきた。2022年の死亡者数は157万人に上った。休眠結核菌による潜伏感染(潜在性結核*3)は世界人口の1/4に及ぶとされ、活動性結核の主要な発生源である。休眠菌は多くの薬剤にも抵抗性で、長期投薬を要する元凶である。
・抗酸菌のヒストン様タンパク質は、細菌では希なヒストンに似た天然変性領域を持ち、その作用で休眠を誘導する。
・本研究グループでは、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)*4によるタイムラプス撮影と、分子動力学計算を組み合わせることによって、MDP1の天然変性領域が両面テープのように2本のDNA二重らせんを貼り合わせていくという、他の核酸結合タンパク質では報告されていない、新規のDNA凝集メカニズムを解明した。
・MDP1の天然変性領域は、抗酸菌と一部のストレス耐性菌に特徴的で、強力な休眠誘導活性を持っていた。本研究成果は、未知であった抗酸菌の休眠誘導の決定的なメカニズムを明らかにした。また本成果は、休眠菌にも有効で、既存薬との交差耐性が無い薬剤の開発にも繋がることが期待される。

概要

 新潟大学大学院医歯学総合研究科細菌学分野の西山晃史講師、松本壮吉教授らの研究グループは、京都大学複合原子力科学研究所(清水将裕助教)、金沢大学ナノ生命科学研究所(古寺哲幸教授ら)、九州大学生体防御医学研究所(眞栁浩太講師[現・同大学大学院薬学研究院])、大阪公立大学(山口雄大助教[現・国立感染症研究所])、新潟大学大学院自然科学研究科(伊東孝祐准教授)との共同研究で、抗酸菌の天然変性ヒストン様タンパク質mycobacterial DNA-binding protein 1(MDP1)が、他の核酸結合タンパク質では報告のない、天然変性領域*1を介した新規のDNA凝集メカニズムを介して抗酸菌の休眠を誘導することを明らかにしました。
 本研究成果は、2024年1月25日発刊のオックスフォード大学出版の科学誌「Nucleic Acids Research」に掲載されました。

用語解説

*1 天然変性領域:一部のタンパク質の内部(または全体)に存在する領域。アミノ酸配列の低複雑性や偏ったアミノ酸組成のために一定の立体構造をとることができず、まるで変性しているかのように振る舞う。近年、様々な細胞機能(クロマチン制御等)、疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等)に関与していることが報告されている。
*2 薬剤パーシスター:一定数の感受性菌を薬剤で処理しても、死滅せずに一部の菌が長期間生存する場合がある。このような、薬剤に低感受性を示す一群を薬剤パーシスターと呼ぶ。慢性感染症や感染症の再燃などに関連する。
*3 潜在性結核:結核菌に感染しているが、菌の休眠などにより結核を発病しない状態。
*4 高速原子間力顕微鏡(高速AFM):探針でなぞることでステージ上の物質の表面構造を画像化する解析装置。水溶液中の生体高分子(タンパク質、核酸など)の構造・動きをナノメーター、1秒以下の時空間解像度でタイムラプス撮影することが可能。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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