宇宙最初の星は「ひとりっ子」で誕生する

~高精度磁気流体シミュレーションが切り開いたファーストスター形成の新展開~

ポイント

・宇宙最初の星・ファーストスター(※1)形成における新たな磁場増幅メカニズムを発見
・増幅後の強磁場によって、小質量のファーストスター(※2)が形成できず、大質量の巨大なファーストスターのみが誕生する
・ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(※3)による初期宇宙観測による検証に期待

概要

 ビッグバンから数億年後の宇宙に誕生する宇宙最初の星・ファーストスター形成時に、従来の数値シミュレーションでは数個から数百個の小質量のファーストスターが同時に誕生することが報告されていました。このシナリオから予言される小質量のファーストスターは現在の宇宙で見つけることができるはずなのですが、その痕跡は未だ観測されておらず、理論的な説明が求められていました。
 本研究では、ファーストスター形成過程における磁場の新たな増幅機構を発見し、急増幅された強い磁場の効果によって小質量ファーストスターの形成が抑制されることを明らかにしました。
 東京大学大学院理学系研究科の平野信吾特任研究員、九州大学大学院理学研究院の町田正博准教授らの研究グループは、ファーストスターの表層までを取り扱う高精度な磁気流体シミュレーションを行うことで、ファーストスター形成過程における磁気流体効果(※4)を検証しました。ファーストスターが誕生する初期宇宙の磁場強度は現在の宇宙と比べて10桁以上低く、極めて微弱なのですが、星や星周ガスの回転運動によって15桁以上指数関数的に増幅することが初めて分かりました。増幅後の強磁場が星周ガスの回転運動を弱めるため、円盤分裂が抑制され小質量ファーストスターは誕生せず、大質量の巨大なファーストスターは「ひとりっ子」で誕生します(下図)。
 今回の発見はファーストスター形成における磁気流体効果の重要性を明確にし、形成シナリオの再構築を促すものです。ファーストスターはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の科学目標の一つである宇宙最初の銀河・ファーストギャラクシーの構成要素であるため、今後の宇宙望遠鏡の観測への理論モデルとして役立つことが期待されます。また、大質量ファーストスターは大質量ブラックホールへと進化するため宇宙最初のブラックホール(ファーストブラックホール)形成を解き明かすヒントとなります。
 本研究成果は米国の雑誌「The Astrophysical Journal Letters」に2022年8月12日(金)に掲載されました。

用語解説

(※1) ファーストスター
宇宙の進化の中で生まれた第一世代の星々。ビッグバン元素合成によって作られた元素しか含まないガスが重力収縮して形成された、炭素より重い元素を全く含まない星である。その質量は太陽質量よりもはるかに大きかったと予想されているため、超新星爆発などを通して、その後の銀河形成期の物質進化に大きな影響を与えたと考えられる。
(※2) 小質量のファーストスター
星の特徴や進化を決定づけるのはその質量である。質量が太陽の0.8倍以下のファーストスターは寿命が宇宙年齢(138億年)程度になるため、現在まで生き残っているはずである。しかし長年の探索にもかかわらず、銀河系内ではファーストスターはまだ見つかっていない。
(※3) ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
アメリカ航空宇宙局(NASA)が運用する赤外線観測用宇宙望遠鏡。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機にあたる。2021年12月25日に打ち上げられ、2022年7月11日に最初の観測画像が公開された。主な科学目標の一つが、ビッグバンから数億年後に誕生するファーストスターからの光を観測することである。
(※4) 磁気流体効果
電磁場と相互作用する電離したガス成分を含む流体(プラズマ)は、磁力線とともに動く(磁場の凍結)。原始星を取り巻くガスは円盤状に回転しているが、磁場は円盤に刺さったゴムひものように働き、回転によって捩じられると元に戻ろうとして回転運動にブレーキをかける(磁気ブレーキ)。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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