虫で虫を退治する九州大学発スタートアップの法人設立

九州大学大学院比較社会文化研究院・共創学部・昆虫科学新産業創生研究センター・ 松尾 和典講師(専門:寄生蜂の分類学・生態学)が国内で初めて確認した在来寄生蜂・キャメロンコガネコバチ(通称・キャメロン)を活用して、畜産害虫サシバエの防除事業を展開する「株式会社Arthron(アルスロン)」(代表取締役 荒木 啓充、本社:福岡市)を令和7年2月14日に設立しました。

畜産害虫サシバエは、牛の血を吸う吸血性昆虫で、刺された牛はストレスを受けることで生産性(乳量や肉量)の低下を引き起こすほか(*1)、吸血を通じて牛の伝染病を広げる原因にもなります。特に、近年増加している牛伝染性リンパ腫ウイルス(*2)や、昨年国内で初めて確認されたランピースキン病ウイルスを媒介することが明らかになっており、畜産現場における深刻な問題となっています。こうした状況の中、松尾講師が確認したサシバエの天敵寄生蜂・キャメロンは、新たなサシバエ防除法として期待されています。株式会社Arthronは松尾講師が開発したキャメロンの同定方法と高効率に飼育する方法を活用してサシバエの防除事業を展開し、畜産農家の生産性向上と畜産動物のアニマルウェルフェア向上に貢献していきます。

松尾講師より一言

畜産業をはじめ食料生産の現場には多くの課題があります。今後もこれらの課題に向き合い、解決に向けた取組を進めて参ります。

用語解説

*1:米国ではサシバエによる経済的被害額は22億ドル/年と報告されている。

*2:牛の白血病とも言われ、20年前に比べ発症頭数は約25倍になっている。サシバエは牛伝染性リンパ腫ウイルスの媒介因子の一つとされている。

*3:キャメロンは世界的に分布しており、国内においても、北海道から沖縄まで広く生息する在来種である。

*4:キャメロンがサシバエの蛹を自ら探索するため、畜産農家はキャメロンを蒔くのみで、既存の防除法に比べ作業負担は軽減される。

*5:農薬を使わないため、土壌・水質汚染が無く、また、薬剤抵抗性の心配も無い。

お問い合わせ

株式会社Arthron         
Mail:info★arthron.co.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。

《3/28開催》第106回サイエンスカフェ@ふくおか 「縄文文化の多様性とその背景に迫る!」~なぜ縄文文化は“東高西低”に見えるのか?~

CAR-T細胞療法の神経毒性を予測する新規バイオマーカーを発見!

関連記事

  1. BlueMemeと九州大学、量子AIを活用した先…

    創薬・医療研究の新たな可能性を切り拓く量子機械学習モデル「QTFPred」を…

  2. リビングラボを用いて思考実験と経験的洞察の統合で…

    ~高次哲学的考察とHRI実証研究を統合した革新的なAI倫理影響評価方法論の提…

  3. 新ニーズに対応する九州がんプロ養成プラン「市民公…

    ~ 新ニーズに対応する九州がんプロ養成プラン ~ がん医療について…

  4. 網膜の血管地図を再現する数理モデル

    目の病気の理解を前へ医学系学府博士課程4年(研究当時) / 医学研究院…

  5. 肺を健康に維持するためには口の衛生管理が重要!

    〜 舌苔細菌の蓄積と高齢者の気流制限との関連が明らかに 〜 九州大学…

  6. 農学研究院 石野 良純教授が日本遺伝学会木原賞を…

    〜石野 良純教授が日本遺伝学会木原賞を受賞〜本学大学院農学研究院…

  7. クルミの葉から他の植物の生育を抑える新たな成分を…

    ~環境に優しいバイオ除草剤の開発に期待~薬学研究院坂元 政一 准教授…

  8. 《3/31-4/12開催》未来共創リーダー育成プ…

    学問と現実的な課題解決をつなぐ人材の育成当プログラムは、高度に幅…