〜 舌苔細菌の蓄積と高齢者の気流制限との関連が明らかに 〜
九州大学大学院歯学研究院口腔予防医学分野の竹下徹准教授と山下喜久教授らの研究グループは医学研究院呼吸器内科学分野の松元幸一郎准教授らとの共同研究により、久山町研究 (主任: 医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授)の一環として、舌表面に蓄積した細菌の量と高齢者の気流制限(息の吐き出しにくさ)との関連を明らかにしました。
舌の表面の溝には大量の常在細菌が生息しており、ここから剥がれ落ちた細菌を我々は常時飲み込んでいます。これらの細菌の大部分は食道を通過して胃に運ばれほぼ死滅しますが、ごく微量ながら気道にも流入していることが最近明らかとなってきました。一方で唾液中の細菌の供給源となる舌の常在細菌叢の状態が気道や肺に与える影響はこれまで注目されてきませんでした。
今回、研究グループでは福岡県久山町の70〜80歳の高齢者 484 名の舌苔細菌叢の状態と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の特徴である気流制限の有無との関連を検討しました。その結果、舌上の総細菌量が多い者(上位50%)では少ない者(下位50%)に比べ気流制限の頻度が高いことが明らかとなりました。特に優占種の一つであるPrevotella melaninogenicaの量が多いほど気流制限の頻度が高い傾向が認められました。これらの結果は口腔管理による舌の常在細菌叢の制御が肺機能の維持に役立つ可能性を示しています。
本研究は日本学術振興会科学研究費JP19H03863、JP19K22722、JP16H05557、JP20H03901の支援を受け、その成果は2021年2月18日付けで欧州呼吸器学会が発行するオンライン学術誌「ERJ Open Research」に速報版が掲載されました。
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九州大学プレスリリースをご参照ください。