アーキアのDNA合成酵素が鋳型DNAの二本鎖を解く機能に貢献!

〜アーキア(古細菌)がどのようにDNAを複製するのかを解明〜

 九州大学大学院農学研究院の石野良純教授、山梨大学大学院総合研究部生命環境学域の大山拓次准教授らの研究グループは、アーキア(古細菌)が、どのようにして遺伝情報を担うDNAを複製するのかを解明しました。本研究では、アーキアの必須酵素であるDNAポリメラーゼD(ポルD)が鋳型となる二本鎖DNAを解くヘリカーゼ複合体と直接結合すること、そしてその結果ヘリカーゼ活性が促進されて、新生鎖の合成が協調的に進むことを実験的に示しました。アーキアでレプリカーゼとヘリカーゼの機能的な相互作用を証明したのは初めてのことです。
 DNA複製は生命の維持にとって必須の現象であり、多くのタンパク質が複合体を形成して、迅速、正確に遺伝情報を複製しています。アーキアはバクテリア、真核生物とともに、生物の3ドメインを形成しています。アーキアは超高温、低温、高塩濃度、強酸性などの極限環境下で生息する微生物として知られてきましたが、近年のメタゲノム解析により通常環境下にも広く分布しており、地球の環境変動にも関係していることが分かってきています。また我々ヒトの直接の祖先という説もあり、生物としての進化的興味も広がっています。更に超好熱アーキアは特殊環境で働く産業用酵素の資源としても有用であり、PCR法に利用されるDNAポリメラーゼはその代表です。
 石野教授らの研究グループは超好熱性アーキアから、他の生物ドメインには存在しないアーキア特有のDNAポリメラーゼを発見し、ポルDと名付けて研究を継続してきました。今回の研究でポルDを構成する二つのタンパク質DP1、DP2のうち、DP1が鋳型二本鎖を解くヘリカーゼ複合体を構成するGins51と特異的に結合し、鋳型鎖の解離と新生鎖の合成が協調して進行するしくみを明らかにしました。またPolD とGins51複合体の結晶構造を決定し、両者の相互作用様式を解明しました。さらに、この相互作用様式は真核生物でも保存されており、アーキアとヒトが共通の複製装置から進化していることを機能的に証明しました。これらの成果により、第3の生物アーキアのDNA複製機構の理解がさらに進み、バクテリア、真核生物との比較によるDNA複製装置の原理を理解するための研究がさらに加速されて、今後の発展がますます期待されます。

 本研究は、日本学術振興会科学研究費(JP20J12260, JP19K22289, JP21K05394, JP18K06081), JST,A-STEP (JPMJTM19AT), AMED-BINDS(JP19am0101069, support number 0670) の支援を受けて行われました。本研究成果は、核酸生物化学の国際専門誌「Nucleic Acids Research」誌の“Breakthrough article”(top 2-3%)に選出され、オンライン版で2021年9月27日(月)(米国時間)に掲載されました。

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プレスリリースをご参照ください。

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日本気象学会九州支部第21回気象教室

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