チオフェン縮環ナノベルトの合成に成功

-光電子デバイスや極性材料などの応用に期待-

工学研究院
君塚 信夫 主幹教授

概要

理化学研究所(理研)開拓研究本部伊丹分子創造研究室の伊丹健一郎主任研究員(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)主任研究者)、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の八木亜樹子特任准教授、名古屋大学大学院理学研究科の周戸大季博士後期課程学生(研究当時)、九州大学大学院工学研究院の君塚信夫主幹教授らの国際共同研究グループは、チオフェン[1]を骨格内に組み込んだ芳香族ナノベルト[2]であるチオフェン縮環[3]ナノベルト(チオフェンベルト)の合成に初めて成功しました。

チオフェンベルトは、結晶中で同一方向かつ柱状に積層する一方、金属表面では2次元状に単層を形成します。さらに、チオフェン骨格の導入効果により低温でリン光発光を示しました。

このようなチオフェンベルトのユニークな性質は、光電子デバイスや極性材料など、さまざまな応用につながるものと期待されます。

本研究は、科学雑誌『Nature Communications』オンライン版(2月3日付:日本時間2月3日)に掲載されました。

用語解説

[1] チオフェン
硫黄原子を一つ含む五角形の構造(5員環という)を有する有機分子。ベンゼン環([6]参照)と同様のπ電子数を有する6π電子系の芳香族化合物。

[2] 芳香族ナノベルト、ナノリング
芳香環が筒状につながった分子であり、剛直な構造を持つ。2017年に伊丹主任研究員らが合成したカーボンナノベルトも芳香族ナノベルトに含まれる。ナノリングは芳香環同士が一つの単結合を介して環状に連結された分子群を指す。

[3] 縮環
環式化合物において一つの環を構成する2個以上の原子が、同時に別の環の構成原子になっているような場合を指す。チオフェンベルトの場合、ベンゼン環とチオフェン環が2個の炭素原子(構造式では六角形と五角形の辺)を共有してつながっている。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

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工学研究院 君塚信夫 主幹教授

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