発達期の麻酔薬曝露による学習・記憶障害誘導のメカニズムと治療法の発見に成功

〜複数回麻酔薬曝露による認知機能障害改善に期待〜

概要

 九州大学大学院医学研究院の土井浩義助教・松田泰斗助教・中島欽一教授らの研究グループは、発達期における複数回の麻酔薬曝露によって生じる将来的な学習・記憶障害は、脳の海馬で神経細胞(ニューロン)を新しく作りにくくなることが原因であることを明らかにしました。また、運動(ランニング)がこの麻酔薬曝露による学習・記憶障害を改善することも発見しました。
 疫学調査から、3歳までに複数回の麻酔薬曝露を受けることが、成体期以降の学習・記憶障害やADHD(注意欠如多動性障害)のリスクの増加に関連することが分かっていましたが、その理由は良く分かっておらず、有効な治療法も確立されていませんでした。本グループは、麻酔薬が神経幹細胞の遺伝子発現を変化させ、神経幹細胞を強制的かつ長期的に休ませてしまうことを見出しました。また、神経幹細胞が継続的に休んだ結果、発達期から成体期にかけて新生されるニューロンが少なくなるために、学習・記憶障害が引き起こされることが分かりました。さらに、運動によって、休止状態にあった神経幹細胞を呼び覚まし、再活性化することで、この学習・記憶障害を改善できることも明らかにしており、こうした成果は将来的な臨床への応用が期待できます。
 本研究成果は、2021年9月13日(水)午後3時(米国東部標準時間)に国際学術雑誌『Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America』に掲載されます。なお、本研究は日本学術振興会科研費(JP16H06527、JP16K21734、JP18K14820、JP21H02808)、パブリックヘルス科学研究助成金の支援を受けました。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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