病的ひきこもりと健康なひきこもりを区別する評価法(HiDE)開発

〜ゲーム障害・うつ病などを併存しやすい「病的ひきこもり」の早期支援実現へ期待〜

ポイント

・コロナ禍を経て、オンライン授業・在宅ワークの普及により、病的ではない「健康なひきこもり」の存在が示唆され、「病的なひきこもり」と区別できる指標が求められている。
・「病的ひきこもり」および「非病的(健康な)ひきこもり」を評価するためのツールHiDE(Hikikomori Diagnostic Evaluation)[構造化面接法および自記式スクリーニング票]を開発。
・HiDEによるオンライン調査で、物理的にひきこもりはじめて3ヶ月未満の「病的ひきこもり」の人がゲーム障害になりやすく、コロナ禍での縦断調査では意外にも外交的で社会的役割を希求する傾向が「病的ひきこもり」のリスク因子として同定された。
・HiDEの活用により「病的ひきこもり」の早期発見・早期支援を実現することで、うつ病やゲーム障害など精神疾患の予防に繋がることが期待される。

概要

 「社会的ひきこもり(以下、ひきこもり)」は、一般的に6ヶ月以上にわたり就労・学業など社会参加を回避し、自宅に留まっている現象を指しています。最近では国外でもひきこもりに類する現象が報告され、国際的に通用するひきこもりの評価基準が求められています。ひきこもり研究ラボ@九州大学(代表:九州大学大学院医学研究院精神病態医学 准教授 加藤隆弘)では、2020年に国際的に通用する「病的ひきこもり(pathological social withdrawal: pathological hikikomori)」の診断評価基準を日米共同研究で開発し、「病的ひきこもり」の必要条件を「社会的回避または社会的孤立の状態であり、大前提として自宅にとどまり、物理的に孤立している状況」かつ「こうした物理的ひきこもり状況に対して本人が苦悩しているか、機能障害があるか、あるいは、家族・周囲が苦悩していること」としました。他方、コロナ禍を経て在宅ワークやオンライン授業が新しいライフスタイルになりつつある現在、物理的にひきこもっていても、病的でない「健康なひきこもり」の存在も示唆されています。
 今回、ひきこもり研究ラボでは、「病的ひきこもり」と「非病的(健康な)ひきこもり」とを区別できるツール「HiDE(Hikikomori Diagnostic Evaluation)」(構造化面接法および自記式スクリーニング票)を開発しました。HiDEでは期間に関わらず両者を評価することを可能としました。
 ひきこもり診断評価スクリーニング票HiDE-Sを用いて一般住民向けのオンライン調査を実施したところ、「病的ひきこもり」期間が3ヶ月未満の人の方が、「病的ひきこもり」期間が6ヶ月以上続いている人よりもゲーム障害傾向が高いことを見出しました。さらに、コロナ禍における「病的ひきこもり」の危険因子を明らかにするため、2019年6月時点でひきこもり状況になかった社会人を対象にオンライン縦断調査を実施しました。3割以上が「物理的ひきこもり」を経験していました。意外なことに、社交的で、社会的達成動機が高く、社会的役割を希求し、外交的で協調性が高い人こそが、コロナ禍における「病的ひきこもり」の潜在的な危険因子でした。
 今回開発したひきこもり評価ツールHiDEにより、支援が必要なひきこもり状態にあるかどうかをスムーズに判断できます。さらに、HiDEの活用により、ひきこもりに関連する様々な精神疾患の予防や早期支援につながることが期待されます。今回のHiDEを用いた調査結果は、ポストコロナ時代の新しい生活様式におけるひきこもり対策の難しさを示唆しており、新しい価値観に基づく抜本的なひきこもり支援体制の整備が求められます。
 今回の一連の成果は、世界精神医学会(WPA)が発行する国際学術誌「World Psychiatry」2023年10月号、日本精神神経学会が発行する国際学術誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences(PCN)」2024年1月号に掲載され、最新成果はPCN誌オンライン版に2024年2月29日午前10時(日本時間)に掲載されました。

研究に関するお問い合わせ先

医学研究院 加藤 隆弘 准教授

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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