熊本地域を対象とした60年間のデータ解析による持続可能な農業管理への提言
経済学研究院
藤井 秀道 教授
ポイント
・1985年以前は農業規模が窒素負荷の変動を支配し、1985年以降は農業構造変化が主要因となった
・農業の地域専門化に伴い、窒素負荷生産性の格差は「地域内格差」から「地域間格差」へとシフト
・行政区画別に6つの発展パターンを分類し、実証・地域特性に応じた窒素管理戦略を提言
概要
農業活動に由来する硝酸性窒素による地下水汚染は、飲料水の安全性や生態系に深刻な影響を与える世界的課題です。従来の研究では、国・県スケールの集計分析が中心であり、流域内の行政区画レベルでの詳細な変動要因の解析や地域間格差の定量評価は十分に行われてきませんでした。こうした一律の政策アプローチでは、地域ごとの課題が見えにくく、効果的な対策が遅れるリスクがあります。
長崎大学大学院総合生産科学研究科博士後期課程の李卓霖氏、長崎大学総合生産科学域(環境科学系)の中川啓教授、九州大学大学院経済学研究院の藤井秀道教授、熊本大学大学院先端科学研究部の細野高啓教授、スウェーデン・ルンド大学のRonny Berndtsson教授は、熊本地域の10行政区画における1960年から2020年までの農業統計データを解析し、窒素負荷の時空間変動とその要因を明らかにしました。
本研究では、対数平均ディビジア指数(LMDI)分解法と加重タイル指数を組み合わせた独自の分析フレームワークを構築し、耕種農業と畜産農業それぞれについて窒素負荷の変動を「窒素強度」「農業構造変化」「農業規模」の3要因に定量的に分解しました。その結果、農業政策転換・市場変動・自然災害等複数の外部要因が窒素負荷に異なる影響を与えることが示されました。また、行政区画ごとに6つの発展パターンを特定し、地域実態に即した窒素管理戦略の立案に向けた具体的な政策提言を行いました。
本研究成果は農業システム分野の国際学術誌「Agriculture Systems」のオンライン速報版に、2026年4月27日(月曜日)(日本時間)に掲載されました。
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