ネットワークの三⾓構造が担う情報伝達の役割を解明

~ 数理モデルから⽣物の情報処理メカニズムに迫る ~

ポイント

・⽣物系の情報伝達は、神経や遺伝⼦のネットワーク上で⾏われるが、どのようにして機能的な情報処理が実現されているのかはよく分かっていない。
・本研究で、ネットワークモデル上の情報の流れを記述する公式を独⾃に導出し、⽣物ネットワークでしばしば⾒られる三⾓構造がもつ情報伝達の役割を解明した。
・ネットワーク上の情報処理プロセスの最⼩単位が理解できたことから、⽣物の情報処理ネットワーク全体のメカニズムの解明に繋がっていくことが期待される。

概要

 神経や遺伝⼦のネットワークが⽣物にとって重要な情報処理を⾏っていることに疑いの余地はありませんが、⼀⽅で、なぜ⽣物ネットワークが適切に情報を処理できているのかは、極めて難しい問題です。⽣物ネットワークを模した数理モデルを考え、その情報伝達の特徴を理論的に調べることは有⼒な⼿段ですが、単純なネットワークモデルであっても情報の流れを記述する公式を導くことは容易ではなく、⽣物ネットワークでしばしば⾒られる三⾓構造(ネットワークモチーフ)がどのような情報伝達の役割を果たしているのかは分かっていませんでした。
 九州⼤学数理・データサイエンス教育研究センター/⼤学院芸術⼯学研究院の森史助教と京都⼤学医⽣物学研究所の岡⽥崇特定准教授の研究チームは、ネットワークモデル上の情報流を記述する公式を独⾃に導出し、それを適⽤することで、各ネットワークモチーフがもつ情報伝達の役割を明らかにしました。具体的には、ポジティブフィードフォワードモチーフは⾼周波の⼊⼒を、ネガティブフィードフォワードモチーフは低周波の⼊⼒を遮断するフィルターの役割を備えていることが分かりました。情報処理ネットワークにおける情報転送プロセスの最⼩単位を明らかにした今回の発⾒は、ネットワーク全体の情報処理メカニズムの解明に繋がることが期待されます。
 本研究成果は⽶国の雑誌「Physical Review Research」に2023 年1 ⽉24 ⽇(現地時間)に掲載されました。

用語解説

(※1)ブーリアンネットワーク…神経ネットワークや遺伝⼦ネットワークの代表的な数理モデル。ネットワークの各ノードは、1つ1つの神経細胞や遺伝⼦に対応する。「0」か「1」で表されるノードの状態は、それぞれのノードに割り振られたブール関数に従って更新される。
(※2)ポジティブ/ネガティブフィードフォワードモチーフ…⽣物ネットワークの中でしばしば⾒られる典型的なつながりのパターンの1つ。図のような構造を持つ。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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