BlueMemeと共同研究を進める九州大学研究グループ、ネットワーク構造の”見えない違い”を可視化する新技術を開発

国際学術誌 Journal of Complex Networks に採択、 製薬分野やセキュリティ分野への応用が期待

生体防御医学研究所
藤田 アンドレ 教授

株式会社BlueMeme(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮脇 訓晴、以下 BlueMeme)は、ソフトウェア開発のさらなる効率化と高度化を目指し、2023年より九州大学との産学連携を通じて、ネットワーク構造の解析に関する共同研究を推進してまいりました。この取り組みの中で、BlueMemeと共同研究を行う九州大学 生体防御医学研究所の藤田アンドレ教授の研究グループが、複雑なネットワーク(グラフ)構造の違いをスペクトル解析の枠組みで精緻に可視化する革新的な手法を開発しました。本成果は、理論・応用の両面において高く評価され、2025年7月2日(水)、英国オックスフォード大学出版局が刊行する国際学術誌「Journal of Complex Networks※1」に掲載されました。本手法により、IT分野における複雑なシステム構造の差異をピンポイントで把握することが可能となり、製薬やセキュリティをはじめとした幅広い分野への応用も期待されています。

概要図

巨大ネットワークの“見えない違い”を明らかにする新しい手法の提案

現代の情報システムや社会構造は、複雑かつ巨大なネットワーク(グラフ)として捉えられます。しかし従来の解析手法では、見た目が似通ったネットワーク間の微細な構造差を正確に捉えることが難しく、意思決定や異常検知の精度に限界がありました。例えば、同じ通信ログでも、一方は正常挙動、他方は不正アクセスの兆候を含むといった「見えにくい違い」を的確に把握し、可視化する必要がありました。

このような課題を受けて、本研究グループはグラフ構造の違いを行列の固有値(スペクトル)で捉える従来手法を発展させ、各頂点がスペクトルにどのように寄与しているかを個別に解析する新たな手法「頂点ごとのスペクトル密度分解(vertex-wise spectral density decomposition)※2」を提案しました。

この手法により、ネットワークを構成するノードごとの貢献度を数値化し、視覚的に把握することが可能となります。従来はグラフ全体を単一のスペクトルとして扱っていたため捉えきれなかった、構造の細かな違いまでも明確に示すことができます。

量子コンピュータとの連携による解析の未来

ネットワーク解析には膨大な計算量が伴い、特に大規模かつ高次元なデータに対しては従来のコンピュータの処理能力に限界があります。この制約を打破する鍵となるのが、量子コンピュータの高い並列処理能力と新しいアルゴリズムです。

例えば、数百万規模の遺伝子ネットワークや都市全体の交通流の変化をリアルタイムに解析するような場面では、量子コンピュータの活用により、解析精度を維持しつつ飛躍的な高速化が期待されます。

将来的には、本研究で開発したスペクトル解析技術と量子AIの融合により、これまで困難だった大規模かつ複雑なネットワークの解析が現実のものとなる可能性があります。

スペクトル解析技術で実現することと主な応用例

本技術は、ネットワーク構造の微細な違いを数値化し、視覚的に把握することで、これまで困難だった複雑な構造の差異を明確に捉えられるようにします。これにより、新たな応用の可能性が大きく広がります。

主な応用例:
製薬分野:新薬候補分子の効率的なスクリーニング
同じ分子式を持つ異性体や類似化合物のわずかな構造差をスペクトル解析で識別し、化合物選別の精度向上と新薬開発への貢献が期待されます。
サイバーセキュリティ:金融取引などにおけるネットワークの高精度な異常検知
ネットワーク通信やアクセス履歴の構造変化をスペクトルの変化として捉え、異常挙動や不正アクセスの早期発見が可能となる見込みです。
さらに、量子AIとの連携により、従来の解析限界を超えた高速かつ高精度な処理が可能になり、医療、物流、製造、金融など多様な分野で、システム設計や最適化、予測などの高度課題に対応し、意思決定や問題解決の質を根本から向上させる基盤技術として期待されています。

藤田アンドレ教授からのコメント

「本技術により、これまで見えにくかったグラフ構造の違いをより詳しく明らかにできるようになりました。例えば、見た目は似ていても異なる性質(スペクトル密度)を持つ2つのネットワークがあったとします。これらが別々の仕組みで生成されたことは分かっていても、『具体的にどの部分(ノード)が異なるのか』は分かりませんでした。今回のアプローチにより、その差異に関わるノードを特定できるようになり、IT分野においても、複雑なシステムの中で“どこがどう違うのか”をピンポイントで把握することが可能になります。今後は、システム設計や異常検知、最適化といった領域において、この技術が“構造の違いを読む力”として広く活用されることが期待されます。」

今後の展望

本研究は、従来のネットワーク解析の枠組みを超え、複雑化・多様化する情報構造をより深く、実践的に捉えるための新たなアプローチを提示するものです。学術的意義にとどまらず、医療、製造、金融、サイバーセキュリティなど幅広い分野における実用的応用が期待されており、社会や産業におけるインパクトの大きい研究として注目されています。

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生体防御医学研究所 藤田アンドレ 教授

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