非典型的開始コドンからの翻訳開始機構を解明

-がん等の治療法開発に期待-

 九州大学生体防御医学研究所の中山 敬一 主幹教授、医学系学府博士課程3年の市原 知哉 大学院生、松本 有樹修 准教授、理化学研究所開拓研究本部の岩崎 信太郎主任研究員らの研究グループは、翻訳開始点を正確に同定する新規手法『TISCA(TIS detection by translation Complex Analysis)法』を開発し、通常のAUG開始コドンとは異なるAUG類似開始コドンからの翻訳開始機構の一部を解明しました。
 タンパク質の翻訳は通常、mRNA(※1)のAUG開始コドンから始まりますが、近年、AUGとは異なるコドンから翻訳が開始する非典型的翻訳が起こることが報告されています。しかし、このようなAUG以外の開始コドンからの翻訳開始機構は不明でした。
 本研究グループは、リボソームプロファイリング法(※2)を用いた翻訳開始点同定手法を改良したTISCA法を開発し、非典型的翻訳が起こる場所を網羅的に同定しました。その結果、ヒト細胞の全ての翻訳のうち、4割程度はAUG以外の開始コドンから翻訳が起こると予測されました。プロテオミクス解析により、非典型的翻訳により生じたタンパク質を検出し、また非典型的翻訳から生じるタンパク質の最初のアミノ酸は典型的翻訳と同様にメチオニンであることが分かりました。非典型的翻訳の開始には、eIF2、eIF2A、eIF2Dといった翻訳開始因子が関与することが報告されていましたが、これらの因子がどの程度関与しているかは不明でした。これらの機能を抑制した細胞の解析から、非典型的翻訳は主にeIF2に依存しているということが分かりました。
 近年、非典型的翻訳はがんや精神疾患等の病気に関与することが報告されています。今後さらに非典型的翻訳の仕組みが解明されることで、がん等の病気の新規治療法確立が期待されます。 
 本研究成果は、2021年7月6日(火)(日本時間)に英国科学雑誌「Nucleic Acids Research」で公開されました。

用語解説

(※1)mRNA:messenger RNA の略で、タンパク質を合成するための塩基配列情報を持った RNA です。その遺伝情報は特定のアミノ酸に対応するコドンと呼ばれる 3 塩基配列という形になっていて、リボソームが mRNA の情報からタンパク質を合成する反応を翻訳と呼びます。
(※2)リボソームプロファイリング法:翻訳中のリボソームの mRNA 上の位置を網羅的に特定する手法で、リボソームによって保護される mRNA 断片(リボソームフットプリント)を次世代シークエンサーで読み取ります。リボソームフットプリントはリボソームの大きさに応じた特定の長さを持ち、リボソームがコドンを読み取る際の 3 塩基ごとの周期性を示します。

詳細

プレスリリースをご参照ください。

「『多死社会』の到来―超高齢化社会・日本が迎える医療・ヘルスケアのチャレンジ」(第12回 Q-AOS Brown Bag Seminar Series)

数理モデルによる臨床試験シミュレータを開発

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