大規模データでインスリン応答の動くネットワークを構築

~複雑な生命現象の統合的理解に期待~

 九州大学 生体防御医学研究所の久保田 浩行 教授、松崎 芙美子 助教らの研究グループは、様々な種類の大規模データを用いて、インスリン受容後に時間変化していく分子のネットワークを構築し、肝臓におけるインスリン応答の全体像を明らかにしました。
 あらゆる生命現象は、個々の細胞の中で、RNA、タンパク質、代謝物などの異なる働きをする多数の分子が階層的に影響し合うことによって起こります。技術の進歩によって、細胞内に存在するこれらの分子の量の変化をより容易に計測できるようになってきた一方で、異なる種類の大量の計測データを合わせて解析する手法の開発は進んでいませんでした。
 本研究グループは、食後に分泌され血糖値を減少させるホルモンであるインスリンをマウスに投与し、肝臓細胞内の約3万5千の分子やその化学修飾の量変化を計測しました。そして、取得したデータに分子の機能などに関する膨大な既知知見を統合することにより、インスリンが肝臓細胞の分子群にどのように影響していくかを表すネットワーク図の作成と、その時間変化の解析を可能にしました。その結果、多数の分子の協調的な働きが、インスリン受容の情報を細胞内に広く伝達する部分、RNAやタンパク質の量を調節する部分、代謝反応に関連する部分などを様々なタイミングで制御することで、肝臓が適切にインスリンに応答して機能することが考えられました。
 本研究を足がかりに、今後、様々な生命現象においても大規模データと既知知見を活用した全体像の可視化と理解が進み、生物・医学やその応用にも幅広く貢献することが期待されます。
 本研究成果は2021年8月24日(火)(米国東部時間)に米国科学雑誌「Cell Reports」で公開されました。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

化学放射線療法の効果が低い食道がんにおけるゲノム進化の過程を解明

クローバー会 第1回

関連記事

  1. 糖尿病による持久力低下を回復させる候補物質を発見…

     ~ ⾻格筋の代謝物を標的とするサルコペニア治療法の開発に期待 ~ …

  2. ナノメートルサイズのセンサー粒子が細胞間のコミュ…

    細胞間のやり取りを利用して時間的・空間的な細胞情報の推移を取り出すことに成功…

  3. 卵子の染色体は外側ほど気難しい

    -染色体分配の準備に潜む紡錘体内の空間差を発見-農学研究院三品 達平…

  4. 九州大学客員教授/認定NPO法人ロシナンテス理事…

    客員教授/認定NPO法人ロシナンテス理事長・川原尚行氏による特別講演会を開催…

  5. 吸血生物マダニの血液を固まらなくする成分の活性化…

    ~ 新しいタイプの血液凝固阻害剤開発の基盤情報 ~ポイント・…

  6. 【作品募集】SDGs Design Intern…

    ~デザインで世界を変えよう!SDGs Design Internationa…

  7. 加齢に伴う筋萎縮と柔軟性低下を抑制する抗体を開発…

    治療法の開発による健康寿命の延伸に期待農学研究院辰巳 隆一 教授…

  8. 血球細胞と周囲組織間の酸素輸送動態をシミュレーシ…

    物質輸送現象の解析を可能にする新しい数理基盤の構築工学研究院武石 直…