自然にできるナノ粒子がウラン鉱山の水をきれいにするプロセスを解明

自然にできるナノ粒子がウラン鉱山の水をきれいにするプロセスを解明

九州大学大学院理学研究院の宇都宮聡准教授、理学府修士課程の川本圭祐大学院生(研究当時)、横尾浩輝大学院生(修士2年)らの研究グループは、岡山県人形峠ウラン鉱山(図1)の調査と分析を行い、自然に生成するナノ粒子が鉱山鉱水に含まれるウラン(U)やヒ素(As)などの有害元素を取り込みながら沈殿するプロセスを多角的な分析によって明らかにしました。東京工業大学、日本原子力研究開発機構、米バージニア工科大学との共同研究の成果です。

人形峠ウラン鉱山は現在休鉱山ですが、鉱水中に比較的高い濃度の重元素(U, Asなど)が含まれています。鉱山を管理している日本原子力研究開発機構の施設内を鉱水が流れて滞留する間に有害元素の濃度は減少していることは分かっていましたが、この自然浄化のプロセスは詳しく知られていませんでした。本研究では、現地での調査と実験に加えて、原子分解能電子顕微鏡や放射光X線分析など多角的な分析を駆使して、人形峠鉱水の流路(地下水、貯水池)の水と沈殿物を詳細に分析しました。その結果、地下水が地表にでる地点で酸素に触れ、溶けていた鉄がFe3+に酸化されて水酸化鉄(フェリハイドライト)のナノ粒子が形成されると同時に重元素を取り込み、その後、ナノ粒子が互いにくっつきながら粗粒化(凝集)して沈殿または貯水池に流れ込んで堆積する、という一連のプロセスが明らかになりました。

pHが6.2程度の地下鉱水に含まれる3.4 [μmol/L]のヒ素、0.49 [μmol/L]のウランは、溶存している鉄が酸化して10 nmより小さいフェリハイドライトが生成すると同時に鉱水に含まれる約67 %のヒ素、約80%のウランが吸着して鉱水から除去されます(図2)。このとき、ヒ素は5価として(図3)、ウランは6価として存在しています。非晶質シリカ(SiO2)ナノ粒子と交互に凝集し、数百nm程度まで粒径が大きくなります(図4)。この凝集体の表面の平均的なゼータ電位は時間とともに非晶質シリカのもの(-24 mV)に近づき、純粋なフェリハイドライトとは異なる表面特性を持ちながら、一部貯水池まで移行して沈殿します。この時に貯水池で生成される微生物活動に由来する二酸化マンガンと交互に堆積することが分かりました(図5)。通常フェリハイドライトは準安定相であり時間とともに他の鉄酸化物などに構造が変化しますが、非晶質シリカナノ粒子との凝集によってフェリハイドライトの安定性が増して有害元素の保持がより長く持続していることが示唆されました。

本研究で解明したナノ粒子生成による自然浄化プロセスは、多くの鉱山跡地において、高濃度の鉄、ケイ素、有害元素を含む低酸素条件の鉱水が酸素と触れる地点において普遍的に起こる反応であり、今後の人形峠の環境浄化にも重要な役割を果たしていくことが期待されます。

本研究は、JSPS科研費 基盤研究B (JP16H04634) の支援を受けて行われたものです。また、本研究成果は、2021年2月26日(金) に米地球化学会誌「 Geochimica et Cosmochimica Acta 」に掲載されました。

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九州大学プレスリリースをご参照ください。

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