ミトコンドリア翻訳機能がリソソーム活性を制御する新機構を発見

ミトコンドリア翻訳機能がリソソーム活性を制御する新機構を発見

 九州大学大学院医学研究院保健学部門検査技術科学分野の八木美佳子助教(筆頭著者)、内海健教授(責任著者)、同院臨床検査医学分野の康東天教授らの研究グループは 老化に伴うミトコンドリア翻訳障害がリソソーム機能の酸性化低下を引き起こしオートファジーに関与する新たな分子メカニズムの解明に成功しました。

 八木助教らは、これまでミトコンドリア翻訳調節因子p32の臓器特異的ノックアウトマウスを作成し、白質脳症、拡張型心筋症に関与することを見出してきました。しかし、ミトコンドリア翻訳機能とオートファジー経路との関係、特にリソソーム活性については明らかではありませんでした。本研究では、ミトコンドリア翻訳阻害が低酸素誘導因子HIF1αの発現を促進し、NAD合成酵素のNmnat3遺伝子発現を抑制することでNAD量が低下することを見出しました。さらに、リソソーム外膜上には解糖系酵素であるGAPDH/PGKが存在しNADによる局所的なATP産生を担うユニークな機構を明らかにしました。このことにより、リソソームの機能を低下させ、ひいてはオートファジー低下を引き起こし、病態に関与することを見出しました。ミトコンドリア-リソソーム機能で新たに判明した分子メカニズムからNADはリソソーム機能に必要不可欠であるため、細胞内NAD量を増加できればミトコンドリアを介した老化関連疾患への治療法が期待されます。

 本研究成果は、2021年2月2日(火)午後8時(日本時間)に、欧州分子生物学機関誌『EMBO Journal』 オンライン版に掲載されました。

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九州大学プレスリリースをご参照ください。

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