ー組み合わせや若年層対象でさらに診断精度が向上、早期診断に期待ー
九州大学病院
篠田 紘司 助教
ポイント
・多発性硬化症(※1)は、若年世代に多い脳や脊髄の疾患で、早期診断・早期治療が重要ですが、似た病気との区別が難しく、診断の遅れや誤診が生じやすいことが知られています。
・本研究グループは、多発性硬化症やその類似疾患の評価に最適化した高精度のMRI撮像法を用い、合計192名を対象とした解析で、新しいMRI画像指標の組み合わせが、特に若年者において診断精度を高めることを見出しました。
・本成果は、患者さんの早期診断と適切な治療開始につながることが期待されます。
概要
多発性硬化症(※1)は若年成人で発症しやすく、身体障害や脳機能障害を引き起こす可能性のある自己免疫疾患ですが、似た症状を示す疾患は多く、しばしば診断が難しいことが問題となります。近年、MRI技術の発達により、「中心静脈サイン(※2)」、「パラマグネティックリム病変(※3)」という新たなMRI画像指標が多発性硬化症の診断に有用であることが米国や欧州より報告され、2024年に改訂された多発性硬化症の国際診断基準にも組み込まれました。しかし、これらの画像指標が日本人を含むアジア人でどの程度有用であるかは十分に検証されていませんでした。
九州大学病院脳神経内科の篠田紘司助教、九州大学大学院医学研究院神経内科学分野の松吉彩乃大学院生、竹内創大学院生、磯部紀子教授らの研究グループは、九州大学病院放射線科神経放射線グループ、飯塚病院画像診療科と共に多発性硬化症やその類似疾患の患者さんに最適化したMRI撮像法を作成し、日本人多発性硬化症患者さんにおける「中心静脈サイン」、「パラマグネティックリム病変」、「皮質病変(※4)」の出現頻度や数を評価し、これらの新しいMRI画像指標の有用性を明らかにしました。また、これらのMRI画像指標の組み合わせによって特に若年者で診断精度がさらに向上することも明らかにしました。今回の発見により、多発性硬化症の診断が早期かつ正確に行えるようになり、できるだけ早く適切な治療へつながることが期待されます。
本研究成果は、国際雑誌「Multiple Sclerosis Journal」に2026年2月26日に掲載されました。
研究者からひとこと
本研究の成果により、新しいMRI指標を用いることで、多発性硬化症を疑われた患者さんをこれまでよりも正確に診断することが可能となりました。今後もより良い診療を目指して研究を続けてまいります。
用語解説
(※1) 多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)
免疫系の異常により、自分の脳、視神経、脊髄のあちこちで、神経を覆う細胞が繰り返し障害される神経難病の一つ。
(※2) 中心静脈サイン
頭部MRIで病変の中心部に小静脈が確認される所見のこと。
(※3) パラマグネティックリム病変
頭部MRIで、脳の病変の辺縁部に鉄が沈着している所見のこと。慢性的な脳内炎症に関わっているとされる。
(※4) 皮質病変
脳の表面(皮質)に生じる病変のこと。身体障害や、脳の機能障害に強く関連する重要な病変パターン。
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