G20の消費はPM2.5の排出を通じて年200万人の早期死亡者を生む

G20の消費はPM2.5の排出を通じて年200万人の早期死亡者を生む

 国立環境研究所(物質フロー革新研究プログラム)、京都大学、総合地球環境学研究所、九州大学、早稲田大学、豪州シドニー大学の研究チームは、G20諸国の消費者が購入する製品やサービスの生産によって生じるPM2.5(微小粒子状大気汚染物質)発生量を全球規模で推計し、その曝露により生じる世界各国の早期死亡者(平均死亡年齢よりも前に発生する死亡)は年間約200万人に上ることを解明しました。その中には、約8万人の乳幼児(5歳未満)が含まれます。
 解析はG20のEUを除く19カ国を対象に、2010年の各国の消費がグローバルなサプライチェーンを通じて誘発する大気中のPM2.5濃度を計算し、その曝露に起因する早期死亡者を推計しました。
 結果、G20の消費はPM2.5の排出を通じておおよそ200万人の早期死亡者を一 年間で生じさせると推計されました。その中で日本の消費は年間約4万2千人の早期死亡者(死亡時平均年齢70歳)を国内外で引き起こし、死亡者の74%は中国やインドなどをはじめとする日本国外に住む人でした。一人当たりの消費でみると年間0.00033人の早期死亡者ですが、仮にこの消費が平均寿命まで続くと0.027人となるため、 換算すると約36人の生涯消費により一人の早期死亡が生じます。一方、日本国内の生産活動で生じるPM2.5による早期死亡者は約1万7千人(死亡時平均年齢76歳)と推計されました。すなわち日本の消費によるPM2.5の影響は生産よりも約2万5千人多く6歳若い(76歳と70歳の差)早期死亡者を生み出す状態にあります。これにより、日本は従来の生産側よりも消費側に対する大気汚染管理を推進することで早期死亡者を減らす機会を大きく拡大できることが明らかになりました。
 本研究の一連の成果の結論は次の通りです。G20はその消費がもたらすPM2.5の発生に対して責任を持つことで、G20が内外の多くの国と対策を協働する根拠を築き、特に乳幼児の早期死亡が多い途上国に対する支援を促進することが期待されます。
 本研究の成果は、2021年11月3日付で自然科学系の国際学術誌「Nature Communications」に掲載されました。

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プレスリリースをご参照ください。

組織の細胞集団に潜む幹細胞のエピゲノム解析手法を開発

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