マイクロ波フロー反応装置による糖の触媒的加水分解

~マイクロ波磁場フロー反応によるスルホン化活性炭触媒の活性向上~

農学研究院
椿 俊太郎 准教授 

ポイント

・持続可能な化学産業の実現に向けてバイオマスなどの有機資源の有効利用が望まれる
・電場/磁場分離したマイクロ波*1照射下でスルホン化活性炭触媒を用いたフロー反応*2を行い、糖類の高効率な加水分解法を達成した
・リグノセルロースや食品廃棄物などの有機炭素資源の有効活用や、フロー合成反応の効率化に貢献する

概要

カーボンニュートラルな化学産業の実現にむけて、生物由来の炭素資源の利用の促進は欠かせません。セルロースを始めとする糖は地球上に豊富な炭素資源として、有効な利用が望まれています。再利用可能で中和を必要としない固体酸触媒*3は、環境に調和した糖鎖の加水分解に有効です。中でも、スルホン化活性炭はバイオマス由来の炭素を原料とし、貴金属を使用しない利点を有しています。しかし、均一系の酸触媒と比較して、固体酸触媒による加水分解反応は活性が低く、バッチ式オートクレーブによる高温かつ長時間の水熱反応が必要とされてきました。

九州大学大学院農学研究院の椿俊太郎 准教授、富士電波工機株式会社の仙田和章 氏、高知大学の恩田歩武 准教授、沖縄工業高等専門学校藤井 知 教授の研究グループは、マイクロ波とフロー反応を組み合わせ、効率的な糖の加水分解反応を確立しました。マイクロ波の電場と磁場の空間的な分離により、効率的にスルホン化活性炭触媒の充填層を加熱することができる、フロー触媒反応装置を開発しました。導電性に優れたスルホン化活性炭*4は、マイクロ波磁場による誘導加熱*5によって高選択的に加熱され、これによりセロビオースからグルコースを高収率かつ連続的に得ることに成功しました。

本研究成果はAmerican Chemical Societyの「ACS Sustainable Engineering and Chemistry」誌に2024年12月16日(月)(日本時間)にオンライン掲載されるとともに、Supplementary Coverに選ばれました。

研究者からひとこと

マイクロ波は空間を伝搬して、固体触媒に直接エネルギーを与えることで、反応が加速します。これにより、反応器や反応溶媒を透過して、反応が進む固体触媒を高選択的に加熱することができます。本研究では、マイクロ波の磁場を用いることで、マイクロ波が水溶媒を透過してスルホン化活性炭を直接加熱し、かつ、連続的に触媒反応することで、低消費エネルギー化と反応効率の向上を達成しました。

用語解説

(※1) マイクロ波
周波数が300 MHz~30 GHzの電磁波の一種で、通信(携帯電話、WiFiなど)やレーダーとして広く利用される。2.45 GHzや5.8 GHz の特定の周波数は、家庭用電子レンジや産業用加熱装置としても利用される。

(※2) フロー反応
従来のフラスコやオートクレーブで行う反応(バッチ反応)は、生産性の観点で長い反応時間や、操作の煩雑さ、エネルギー効率などの改善が求められる。フロー反応では、短時間で連続的に目的生成物を得ることできるため、生産効率の向上が期待できる。

(※3) 固体酸触媒
従来の硫酸や塩酸などの均一系の酸触媒は、反応後に中和が必要となり、廃棄物多くなる。固体酸触媒を用いることで、酸の中和が不要となり触媒を濾別(ろべつ)することで容易に分離回収し、再利用することができる。

(※4) スルホン化活性炭
固体酸触媒の一種。硫酸で活性炭を処理することで、活性炭に強酸性のスルホン酸基(ーSO3H)を結合した触媒。セルロースなどの加水分解に有効。貴金属を用いず安価に製造することができる。

(※5) 誘導加熱
金属や炭素などの導体に磁場を与え、表面に生じる渦電流を生じ、ジュール加熱が生じる現象。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問い合わせ先

農学研究院 椿俊太郎 准教授

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