味とにおいに寄与する成分を同時に検出可能な新たな分析法を開発

~食品の風味(おいしさ)の数値化・客観的理解に期待~

ポイント

1.ヒトが口腔内で検知しているような味やにおいを同時に解析する技術は存在せず、味とにおいを一元化した食品の風味(おいしさ)を定量的に評価することはこれまで不可能だった
2.本研究で味とにおいに寄与する成分を同時に検出可能な新たな分析法を開発
3.従来数値として表現することが困難であった食品風味・品質の評価、さらにはおいしさの客観的評価・理解に大いに役立つと期待

 ヒトは喫食時に、食品から口腔内に放出される味とにおいに寄与する成分を味覚・嗅覚(化学感覚)情報として一斉検知することで、風味を認知し、おいしさを評価しています。しかしながら、ヒトが口腔内で検知しているような味やにおいを同時に解析する技術は存在せず、味とにおいを一元化した食品の風味(おいしさ)を定量的に評価することは不可能でした。従来の食品風味成分分析では、味成分は液体クロマトグラフィー(LC)、におい成分はガスクロマトグラフィー(GC)というように、分析対象とする成分の化学的特性に合わせて分析法を選択する必要がありました。さらには、分析を行う前段階として成分抽出など、煩雑な前処理を必要とするため、ヒトの知覚している味とにおいに寄与する風味成分を食品そのままの状態で評価することは不可能でした。
 今回、九州大学大学院農学研究院食品分析学分野の田中 充准教授らの研究グループは、揮発/不揮発性化合物に対する吸着能を有するグラファイトカーボンブラックナノ粒子(GCB)に着目しました。そして、GCBをレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)(※1)のイオン化支援剤として利用することで、味成分(アミノ酸、核酸、糖など)とにおい成分(エステル、アルコール、アルデヒドなど)の同時検出に成功しました。本研究で開発した新たな分析法であるGCB-LDI-MS法は、煩雑な前処理の必要が無く、食品をそのまま分析することが可能です。そのため、食品や農作物の風味・品質の評価に広く活用できる新規の迅速かつ簡便な分析法として期待されます。
 本成果により、食品本来の味とにおいに寄与する風味成分情報を一元化したデジタル情報へ変換することが可能になり、従来数値として表現することが困難であった食品風味・品質の評価、さらにはおいしさの客観的評価・理解に大いに役立つと期待されます。
 本研究成果は、2022年1月25日(火)10時(日本時間)に米国科学誌「ACS Applied Nano Materials」に掲載されました。なお、本研究は学術変革領域研究(A)「深奥質感」(JP21H05828)および日本学術振興会科学研究費(JP21K19089)等の支援を受けました。

用語解説

(※1)レーザー脱離イオン化質量分析
レーザー照射によるエネルギーを利用し、分析対象物質を昇華・イオン化させ、その分子の質量数(質量電荷比)により分離・検出する分析法。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

大腸菌染色体のコピー数を制御するメカニズムを解明

⺟⼦間の⼝腔細菌共有を⾼精度に検証

関連記事

  1. ロジウムを凌駕する高耐久性な多元素ナノ合金排ガス…

    ―地金価格9割カットでNOx還元高活性と高耐久性の両立を実現― 京都…

  2. 《3/13開催》イオンモビリティーESI/MAL…

    五感応用デバイス研究開発センターでは、最先端の質量分析装置 timsTOF …

  3. 逃避する動物が見せる目立つ行動、その性差を生じる…

    逃避する動物が見せる目立つ行動、その性差を生じる要因とは? チータ…

  4. 未来共創スクール「デジタル田園都市国家構想とDX…

    ~ 九州大学大学院未来共創スクール in 熊本~ 未来共創リーダー…

  5. 小惑星リュウグウでみつかった窒化した鉄の鉱物

    ~ 太陽系の遠方から辿り着いた窒素に富む塵 ~概要 太陽…

  6. 中性子寿命の謎、解明に向けた新実験が始動

    ―第3の手法により中性子寿命問題の解明に挑む―ポイント・新しい手…

  7. 農学部附属農場でブドウ生産者団体の視察研修を受け…

    令和7年1月29日に、農学部附属農場において、ブドウ生産者団体の視察…

  8. 令和6年度開学記念式典を挙行・記念講演会を実施

    ~令和6年度開学記念行事~ 本学は、5月11日を「開学記念日…