全身性エリテマトーデスの発症に関わる遺伝子座を同定

-世界最大のアジア人研究コホートで解明進む-

 理化学研究所(理研)生命医科学研究センター骨関節疾患研究チームの末次弘征大学院生リサーチ・アソシエイト(九州大学大学院医学系学府医学専攻博士課程)、池川志郎チームリーダー、ゲノム解析応用研究チームの寺尾知可史チームリーダー、福岡大学医学部整形外科学教室の山本卓明教授らの共同研究グループ※を中心とする特発性大腿骨頭壊死症調査研究班は、日本・中国・韓国からなる20万人以上のアジア人集団の遺伝情報を用いて大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に関わる疾患感受性領域(遺伝子座)を新たに46カ所同定しました。

 本研究成果は、SLEの詳細な診断基準の確立や患者それぞれに対応した治療法の開発につながると期待できます。
 SLEは、何らかの免疫機構の異常により自己抗体[4]が産生され、皮膚・脳神経系・腎臓・新血管系をはじめとする全身の臓器が障害される病気で、その発症には遺伝的要素が関与していることが知られています。

 今回、共同研究グループは中国・韓国の研究グループと協力し、アジア人集団(SLE患者1万3377人、対照群19万4993人)におけるSLEの大規模GWASのメタ解析[5]を行いました。これは、SLEに関する研究コホート(集団)としては世界最大です。その結果、SLE発症に関わる新しい遺伝子座を46カ所同定しました。そのうち2カ所はアジア人特有の遺伝子座であり、アジア人とヨーロッパ人ではSLEの病態の一部が異なっていることが示されました。
 本研究は、科学雑誌『Annals of the Rheumatic Diseases』(2020年12月3日付)に掲載されました。

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