ブドウを根頭がんしゅ病から守る!

拮抗細菌が根頭がんしゅ病を抑制する仕組みを解明 ~ 病原細菌に感染する頭部を欠いたファージ尾部様粒子rhizoviticinを発見 ~

ポイント

・根頭がんしゅ病は病原細菌によって引き起こされるブドウの重要病害です。岡山県農林水産総合センターでは、この病原細菌に対し抗菌効果を持ち、同病を抑制できる拮抗細菌を特定していましたが、その作用機序は不明でした。
・今回、その抗菌効果の実体が、頭部を欠いたファージ尾部様粒子(通称 テイロシン)であることを突き止め、rhizoviticin(リゾビティシン)と命名しました。
・本研究は、テイロシンが拮抗細菌の防除効果の原因であることを示した初めての例です。拮抗細菌の生物農薬としての利用促進、さらなる有用細菌の選抜、テイロシンによる防除法開発などが期待されます。
・rhizoviticinはアルファプロテオバクテリア綱では初のテイロシン発見例で、そのゲノム構造は既知のテイロシンと異なることから、テイロシンの起源や進化を知る鍵になりえます。

概要

 岡山大学大学院環境生命科学研究科の石井智也大学院生(当時)、齋藤晶大学院生(当時)、Niarsi Merry Hemelda大学院生(博士後期課程3年)、農学部の土田菜月学部生(当時)、大学院環境生命自然科学研究科の包継源大学院生(博士後期課程1年)、学術研究院環境生命自然科学学域(農)の能年義輝教授と農研機構西日本農業研究センターの川口章上級研究員、理化学研究所環境資源科学研究センターの佐藤繭子技師、豊岡公徳上級技師、石濱伸明研究員、白須賢副センター長、九州大学大学院医学研究院の林哲也教授らの共同研究グループは、ブドウの重要病害である根頭がんしゅ病を抑制できる拮抗細菌が、頭部を欠いたファージ尾部様粒子によって根頭がんしゅ病の病原細菌を溶菌することで防除能を発揮する仕組みを明らかにしました。本成果は英国時間1月18日、国際微生物生態学会の科学雑誌「The ISME Journal」にオンライン掲載されます。
 根頭がんしゅ病は土壌に生息する植物病原細菌によって引き起こされ、化学農薬での防除が難しい病害です。このような病害には拮抗微生物(生物農薬)が有効です。岡山県農林水産総合センターではブドウ根頭がんしゅ病を極めて強力に抑制する拮抗細菌を特定していましたが、今回その作用機序が明らかになったことで、拮抗細菌の生物農薬としての利用や、さらに有望な菌株の単離に道が拓け、世界のブドウやワイン生産の安定化への貢献が期待されます。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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