植物が見ている空の色は毎日変化する

〜1日の色彩を分類して日射スペクトルを決めている要因をモデル化〜

農学研究院
久米 篤 教授 

ポイント

・日射スペクトル(※1)の植物影響評価には、日射の高精度観測やデータのモデル化が必要不可欠
・簡易な観測データから日毎の日射特性分類(クラスタリング)を再現できる新しい機械学習モデルの開発に成功
・気候変化に伴う日射変化が、植物成長や生物応答、太陽光発電に及ぼす影響の広域評価に期待

概要

植物は、日射を光合成に利用するだけではなく、日射のさまざまな光波長の比率(色彩バランス)を光受容体の応答を通じて環境シグナルとして利用しています。色彩バランスは大気や雲、太陽の高さなどの影響を受けますが、これらの情報は植物生理生態学的には整理されておらず、実態にそぐわない日射モデルによって生物応答が研究されてきました。

そこで、新規に開発された回転シャドウバンド型分光放射計で日射スペクトルの長期観測を行い、日平均日射スペクトルがどのように分類できるか1年間の観測データから解析しました。そして、晴れから曇りまで、5つの異なる分類カテゴリを特定し、日射量や湿度など単純な観測データからこの分類を再現できる新しい機械学習モデルを開発しました。

国立大学九州大学大学院生物資源環境科学府博士課程3年のAmila Nuwan Siriwardana氏と大学院農学研究院の久米篤教授は、日射スペクトル観測データに累積ユークリッド距離行列に基づく凝集型階層的クラスタリングを適用し、赤から青へのスペクトルシフトを伴う5つの日射特徴クラスター(SCI)を特定しました。そして、比較的簡単に取得できる環境変数(日射拡散率、全天日射、日射の変動率、太陽高度、大気湿度)を使用してSCIを再現できる機械学習モデルを開発しました。

この革新的なアプローチにより、世界のさまざまな場所で、天候に依存する日射波長比率の違いのモデル化が可能となり、植物と生態系機能に関する光応答研究が促進されることが期待されます。

本研究成果はエルゼビア社の学術雑誌「Ecological informatics」に2024年12月11日(水)に掲載されました。

研究者からひとこと

本研究はコロナ下で研究活動が制限される中、伊都キャンパスの農学部建物屋上で実施している長期観測データを利用して行いました。糸島半島は曇りの日の割合が高いため、農業生産にも大きな影響が出ていますが、植物が感じる光波長分布も大きく変化しているのには驚きました。
(博士3年 Amila Nuwan Siriwardana)

用語解説

(※1) 日射スペクトル
太陽からの光は地球の大気を通過する過程で波長分布が変化する。太陽光のスペクトルと地上で観測される日射スペクトルとの違いは、日射が大気を通過する過程での変化過程を反映している。

詳細

本研究の詳細はこちらをご参照ください。

お問い合わせ先

農学研究院 久米篤 教授

《1/23開催》九州大学×福岡県聴覚障害者協会青年部 コンサート&公開講座「見える音楽?〜だれもが楽しめる音楽を目指して〜」

メタボローム解析を用いて優良清酒酵母株の選抜過程を飛躍的に効率化する方法を開発

関連記事

  1. キラルな分子集合体が一重項励起子分裂を促進するこ…

    ~太陽電池・光触媒の性能向上や量子スピン材料開発に向けた新しい分子設計指針を…

  2. 世界初、室温における二次元層状磁石の電気的磁気制…

    ~層状物質の隙間を電気的に精密制御し、二次元磁石の磁気特性を効率的に操作~…

  3. 台風の発達をもたらす黒潮の遠隔影響のメカニズムを…

    台風の発達をもたらす黒潮の遠隔影響のメカニズムを解明 台風発達のエネ…

  4. 《11/21開催》九州大学筑紫地区地域連携推進チ…

    今回のテーマは「プラズマ」です 九州大学筑紫キャンパス・筑紫地区…

  5. 510Geosus第2回 環境保全活動参画型オン…

    「五島の椿と海岸に触れて」五島列島の入り組んださまざまな海岸と椿林は…

  6. 工学研究院林博徳准教授らの取り組む研究がNati…

    林博徳准教授らの研究プロジェクトは日本国内では唯一の選出プロジェクトとなりま…

  7. 近年の黒潮続流の大蛇行に伴う海洋熱波が豪雨の発生…

    理学研究院川村 隆一 教授ポイント・2022年の秋ごろから…

  8. 《3/28開催》令和6年度IDE大学セミナー『被…

    ~『被災地支援と大学教育』~令平成23(2011)年の東日本大震災後…