末梢循環障害後の血流回復を促すメカニズムを解明

~末梢動脈閉塞疾患の新たな治療薬開発へ期待~

ポイント

・間欠性跛行(※1)を伴う末梢動脈疾患の治療には、血管内皮細胞の活性化による血管新生やその後の血管の動脈化(血管平滑筋細胞の成熟化)が重要であると考えられてきた。
・血管平滑筋に発現するTRPC6チャネルの活性を阻害することで、血管内皮機能に関係なく末梢循環障害を回復できることをマウスで明らかにした。
・生活習慣病や加齢により、血管内皮機能が低下した末梢動脈疾患患者に対して、TRPC6チャネルの直接的阻害が新たな治療戦略となる可能性を示した。

概要

 手足などの末梢血管の閉塞によって正常に血液が循環しなくなる末梢循環障害は、高齢化に伴い罹患者が増え続けています。血管閉塞後、血管の内皮細胞が活性化することで血管の新生や機能的成熟が起こると考えられており、内皮細胞を標的とする治療薬の開発が注目を集めてきました。しかし実際には、加齢や生活習慣病等の理由により既に血管内皮機能が低下している患者が多く、内皮細胞ありきの治療法では十分な効果が期待できていません。本研究では、血管平滑筋細胞に発現している受容体作動性チャネルタンパク質TRPC6(※2)に着目し、独自に見出したTRPC6チャネル阻害薬が、血管内皮機能に関係なく、下肢虚血後の末梢循環障害を改善させることをマウスで明らかにしました。
 九州大学大学院薬学研究院の西田基宏教授、加藤百合助教らの研究グループは、自然科学研究機構生理学研究所/生命創成探究センター、信州大学、京都大学などとの共同で、下肢虚血後のマウス血管において、血管内皮細胞由来弛緩因子が血管平滑筋細胞のTRPC6タンパク質をリン酸化することでチャネル活性を抑制し、その結果、遺伝子改変マウスを用いて血管の成熟が促進されることを明らかにしました。さらに、環境調和創薬化学分野・大嶋孝志教授らとの連携により、TRPC6チャネル阻害活性をもつ化合物の中から、下肢虚血後の血流回復を最も強く促進する1-BPを得ることに成功しました。
 今回の発見は、加齢や生活習慣など様々な患者背景に依存しない末梢循環障害治療の新たな可能性を提案するものと期待されます。
 本研究成果は英国の雑誌「British Journal of Pharmacology」とスイスのオープンアクセス雑誌「Cells」に、それぞれ2022年12⽉12⽇(⽉)、6⽉28⽇(⽕)に掲載されました。

用語解説

(※1) 間欠性跛行(はこう)
少し歩くと次第に足に痛みを覚え、休息をとると再度歩行可能になる現象のこと。主に血管が詰まるなどして血流が悪くなり引き起こされます。
(※2) TRPC6
Transient receptor potential canonical (TRPC)6は全身に広く発現している受容体作動性カチオンチャネル。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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