固体電解質の性能を左右する隠れたパラメータを掌握!

~高いイオン伝導度を持つ固体電解質を再現性良く作製する機構の解明と実証~

ポイント

・全固体蓄電デバイスの必須部材である固体電解質の性能均質化が課題
・電解質の性能を左右する熱力学的要因を特定し、その制御に成功
・均質な電解質の量産へ向けた足掛かりに

概要

 高い安全性と蓄エネルギー性能の実現可能性から、全固体電池は次世代蓄電デバイス候補の筆頭と目されています。その実現には、現行の有機電解液の代替となる、高速でイオンを通す無機固体電解質が不可欠です。しかし、無機固体電解質のイオン輸送性能は、研究報告レベルでもそのばらつきが顕著であり、その原因の解明や高い伝導を再現性良く得る手立ての検討が望まれていました。

 九州大学工学研究院応用化学部門の大野真之助教、林克郎教授、赤松寛文准教授、吉田傑学振特別研究員(当時)、工学府応用化学専攻の下田昌季大学院生、前川舞有大学院生、Colorado School of MinesのPrashun Gorai助教らの研究グループは、見かけ上同等である試料に潜む熱力学的な差異(※1)が固体中のイオン輸送を時には一桁も変化させ得ることを、Naイオン伝導固体であるNa3SbS4をモデル電解質として用い、理論と実験の両面から明らかにしました。さらに、明らかとなった機構を元に、一般に性能に悪影響を及ぼすと考えられてきた目的相以外の不純物をあえて微量に析出させ、系の熱力学的な自由度を奪う(※2)ことで、イオン輸送性能のばらつきを三分の一以下に抑えることに成功しました。

 今回解明されたばらつきの熱力学的な要因は固体材料に普遍であり、Liイオン伝導固体を含む種々の固体電解質の輸送性能を担保する重要な戦略となることが期待されます。

 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科研費JP21K14720、九州大学QRプログラム(Qdai-jump Research Program)02278の支援を受けたものです。

 本研究の成果は、米国化学会の国際学術誌『Chemistry of Materials』のオンライン速報版に、2022年6月6日(月)(日本時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) 見かけ上同等である試料に潜む熱力学的な差異
 無機化学の世界では不純物の少ない試料を作製することが、その材料固有の物性・性能を評価するうえで重要であると一般に見なされます。しかし不純物がなければいつでも同じ性能を示すかと言えば、そうではありません。材料を構成する各原子が持つエネルギーを化学ポテンシャルと言いますが、この化学ポテンシャルは、全く同じ構造を持つ一見同じ材料でも異なる値を取り得ます。この値に差があると、構造中の欠陥濃度にも差異が現れ、その結果電子やイオンの輸送も変化します。この一見「隠された」パラメータである化学ポテンシャルの違いが、熱力学的な差異です。
(※2) 系の熱力学的な自由度を奪う
 上述の通り、同じ材料であっても化学ポテンシャルの差異により、異なる物性・性能を示します。従って欲しい物性を最大限生かせるよう化学ポテンシャルを制御することが必要となります。そこで今回は、多様な値を取り得る化学ポテンシャルを、一つのものに固定する方法を取りました。化学ポテンシャルが一義に決まっていない場合、その系は自由度があると言えます。ギブスの相律という系の自由度を決めるルールに従えば、温度と圧力が一定の状況で、目的の三元系材料(三つの元素から構成される材料)は、平衡状態で最大で二つの相と共存でき、そのような二つの相と共存している状態では、系の化学ポテンシャルは一義に規定され、自由度を失います。つまり、一般にはできるだけ不純物が少なくきれいな試料がよいとされる中、材料の輸送特性に影響を与えない程度の微量の共存相を意図的に導入することで、化学ポテンシャルの制御が可能となります。これが、系の熱力学的な自由度を「奪う」ということです。自由度を奪うことで、再現性良く高いイオン伝導を得ることができるようになります。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

リュウグウはイヴナ型炭素質隕石でできている

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