分子モーターによる秩序形成の原理を解明

~細胞内の「秩序」が生まれる仕組みを発見~

先導物質化学研究所
森 俊文 准教授

概要

千葉大学大学院理学研究院の原口武士助教、伊藤光二教授、京都大学大学院工学研究科の井上康博教授、九州大学先導物質化学研究所の森俊文准教授、大阪大学大学院理学研究科の松野健治教授らの研究グループは、細胞内のタンパク質が、特別な設計図や指令がなくても、自ら秩序だった構造を作り出す仕組みを明らかにしました。またその仕組みとして、分子モーター (ミオシンCcXI)注1)とアクチン注2)という2種類のタンパク質の相互作用だけで、アクチンが自律的に集まり、一方向に回転し続けるリング状の秩序構造が自律的に形成されることを示しました (図1、および巻末の二次元コードより顕微鏡動画を視聴可能)。これは、細胞内に見られる秩序やキラリティ(左右非対称性)が、ある種の分子モーターの働きを起点として、自然に生じ得ることを示しています。本研究により、生命の形や左右非対称性がどのように作られるのかという根源的な問いに答えるだけでなく、自律的に動くバイオマテリアルの設計など、医療、エネルギー、電子機器の分野において重要なナノテクノロジーへの応用も期待されます。

本研究成果は、2026年1月28日(日本時間1月29日)に米国科学誌Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)で公開されました。

用語解説

注1)分子モーター (ミオシンCcXI)
ATP加水分解のエネルギーを使って運動するタンパク質。並進運動するモータータンパク質としてミオシン、ダイニン、キネシン、回転運動するモータータンパク質としてF型ATPase, V型ATPaseなどがある。このうち、アクチン上を運動するタンパク質をミオシンと呼ぶ。ミオシンCcXIは、高速運動するミオシンとして知られており、生物界で最速のミオシンであるミオシンCbXI-1参考文献1)のパラログである。

注2)アクチン
細胞骨格を構成する主要なタンパク質の一つ。重合してアクチン繊維を形成し、分子モーターと相互作用することで、細胞内の構造形成や運動に関与する。

参考文献1

2022年2月21日公開プレスリリース「生物界で最速のミオシンの発見とその構造解析に成功」

詳細

本件の詳細についてはこちら

関連動画

本研究で観察されたアクチン繊維の自律的な回転運動(顕微鏡動画)を以下のURLもしくは二次元コードより、ご覧いただけます。
動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=y5vGEL7MtM0

お問い合わせ先

先導物質化学研究所 森 俊文 准教授

抗体全体のかたちと機能の鍵となるヒンジ領域

4000万年前の地球磁場で“前例なき長期反転”を新発見

関連記事

  1. 《8/7開催》九州大学 新技術説明会 【オンライ…

    直接研究者とディスカッションいただける絶好の機会です来る8月7日(木)に…

  2. 《11/2-11/9》Asia Week 202…

    2025年のテーマは「Building Bridges in Asia an…

  3. 次世代有機LED材料の電子の動きを直接観察するこ…

    ~発光効率低下の原因を解明~ 有機LED(OLED)は、次世代のディ…

  4. ポータブルヘルスクリニック・アジア地域におけるウ…

    持続可能な社会のための決断科学センター講師 横田 文彦ポータブ…

  5. 群れをなし,働き始めた分子ロボット

    〜実働するマイクロサイズの分子ロボットを世界に先駆けて開発することに成功〜…

  6. 中性子寿命の謎、解明に向けた新実験が始動

    ―第3の手法により中性子寿命問題の解明に挑む―ポイント・新しい手…

  7. 再生可能エネルギーの発電拡大による電力卸売市場の…

     ~気候変動対策の経済的側面からの政策立案に貢献~  太陽光発電や風…

  8. グローバルイノベーションセンターと福岡県直方市が…

     本学グローバルイノベーションセンターと福岡県直方市は、同センターが…