~発光効率低下の原因を解明~
有機LED(OLED)は、次世代のディスプレー材料として期待されています。中でも、熱活性型遅延蛍光(TADF)と呼ばれる特異な発光を示す分子材料は、軽元素のみからなり、発光量子効率100%の実現が可能であることから、次世代のOLEDの中心を担う材料として大きく注目され、盛んに研究が進められています。
TADF材料の発光を支配するのは、励起状態の電子の動き(ダイナミクス)です。従来、電子のダイナミクスは、発光から間接的に推測されてきましたが、直接的な計測は困難でした。今回、構造がよく制御されたTADF材料の薄膜に対して、時間分解光電子顕微鏡(TR-PEEM)を用いることで、TADF発光過程の電子のダイナミクスを直接観察することが初めて可能になりました。これにより、励起電子の生成から、発光による失活、また、濃度消光と呼ばれる特異な無輻射失活過程までの電子の動きを捉えることに成功しました。また、観察の結果、励起電子により生成された励起子が自発的に解離することで長寿命の電子が生成され、この電子がTADFの発光効率を低下させていることを突き止めました。
本研究成果は、TADF発光過程の本質を理解するための基礎的な知見となります。よく制御された薄膜中での励起電子のダイナミクスを系統的に研究することで、高性能のTADFデバイスの開発が加速されると期待されます。
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