19万光年彼方の小マゼラン雲から星の産声をキャッチ!

アルマ望遠鏡(※1) が捉える100億年前相当の星の誕生

ポイント

・太陽系誕生よりも遥か昔の環境でどのように恒星(星)が誕生するかが未解明であった
・100億年前相当の状況に近い小マゼラン雲で星誕生の産声を初めて検出することに成功
・産声を手がかりに、宇宙の遥か昔の星や惑星の誕生過程の解明がさらに進むと期待

概要

 ヘリウムよりも重たい元素のことを天文学では”重元素”(※2) と呼びます。宇宙が誕生した頃は恒星の中で長時間かけて起こる元素合成が進んでいないため、軽い元素が支配的でした。このように現在の宇宙と大きく異なる環境では、どのように星が誕生するかは明確にはわかっていませんでした。
本研究では太陽系よりも重元素量が少なく、約100億年前の宇宙の環境を残した場所からの産声を初めて発見したことにより、宇宙の進化の歴史において星が誕生するメカニズムが共通していることを示す結果が得られました。
 九州大学大学院理学研究院の徳田一起 学術研究員/特任助教 (兼・国立天文台アルマプロジェクト特任助教)及び大阪公立大学大学院理学研究科の大西利和 教授をはじめとする国際共同研究チームはアルマ望遠鏡を使って、地球から19万光年離れた小マゼラン雲(※3) に存在するY246という原始星(幼年期の星)を観測しました。その結果、時速54000km以上の速さで運動する分子のガス流が存在していることを突き止めました。これは星の産声に対応する双極分子流(※4)という現象です。天の川銀河を初めとする現在の宇宙の原始星は、分子雲コア(※5) と呼ばれる星の卵から誕生しますが、この分子流を通して余分な回転の勢いを捨てることにより収縮して大人の星へ成長します。これと同様な現象が重元素量の少ない小マゼラン雲で見られたということは、星の誕生する過程が100億年の歴史の中で共通していたということを示す大きな証拠となります。
 双極分子流は原始星近傍のガス円盤から噴出すると考えられているため、今回の発見は、遥か昔の宇宙環境におけるガス円盤の形成やその円盤中での惑星系の誕生について、新たな視点からの調査を進める第一歩となるかもしれません。
 本研究成果は米国の雑誌「The Astrophysical Journal Letters」に2022年8月26日(金)に掲載されました。

用語解説

(※1) アルマ望遠鏡・・・東アジア(日本・台湾・韓国)・北米(アメリカ・カナダ)・ヨーロッパが共同で運用する国際的な望遠鏡プロジェクトです。チリ・アタカマ砂漠の標高約 5000m の場所に設置されており、合計 66 台のパラボラアンテナを組み合わせることにより高い解像度の天体画像を得ることができます。
(※2) 重元素量 (金属量)・・・天文学では水素とヘリウムよりも重い元素のことを重元素(金属)と呼びます。太陽およびその周辺を基準とし、最も多い元素である水素に対して重元素がどれくらい含まれているかを表します。
(※3) 小マゼラン雲・・・地球から約19万光年の距離にある銀河。我々が住む天の川銀河も含まれている局所銀河群の中では、分子ガスが観測できてかつ原始星(幼年期の星)が詳しく観測できるものの中では最も重元素量が少ない(天の川銀河の1/5程度)環境にあります。
(※4) 双極分子流・・・原始星(幼年期の星)から放出されるほぼ反対向き(南極方向と北極方向)に放出される分子ガスの高速な流れで、産声に対応します。これにより分子雲コア(※5)が持っている回転の勢いを捨て去ることにより大人の星に成長します。太陽系の周辺数万光年以内や大マゼラン雲の原始星では普遍的に観測されてきましたが、今回最も重元素量の小さい銀河で検出できたことがこの研究のポイントになります。
(※5) 分子雲コア・・・宇宙空間には星の材料となる水素原子/分子を主成分としたガスが漂っています。その中でも特に水素分子が豊富に存在する場所が分子雲です。さらに濃くなった場所は分子雲コアと呼ばれており、いわゆる星の卵に相当します。これがさらに収縮することによって、太陽のような恒星や、それよりもさらに重い星(大質量星)その連星が誕生します。

詳細

プレスリリースをご参照ください。

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