クリの世界的害虫クリタマバチの卵成熟様式に関する議論に決着

クリの世界的害虫クリタマバチの卵成熟様式に関する議論に決着

ポイント

・クリタマバチ雌成虫の卵成熟様式について、斉一成熟説(※1)と随意的逐次成熟説(※2)という二つの仮説が提唱されていました。しかし、いずれの説が正しいかは決着がついておらず、その検証が望まれていました。
・当該研究は斉一成熟説を支持しました。
・クリタマバチの斉一成熟性は、本種が世界各地で分布を拡大して重要害虫になった要因の一つと考えられます。今もクリタマバチが分布を拡大中のヨーロッパやその近隣において、本種の分布拡大の予測や防除対策の立案をする際の基礎的知見として、本成果は役立つと期待されます。

概要

 クリタマバチ(図1)の虫こぶ(図2)がクリの芽にできると、その芽から枝は伸びず花も咲かないので、果実ができません。本種は中国起源と考えられ、日本では1940年代に、アメリカ合衆国では1970年代に、ヨーロッパでは今世紀に、それぞれ侵入が確認されました。本種はクリが栽培されている世界各地でクリの重要害虫になっています。雌成虫の卵成熟様式は繁殖能力を決める重要な性質ですが、クリタマバチでは斉一成熟説と随意的逐次成熟説が提唱され、その検証が望まれていました。

 九州大学大学院比較社会文化研究院の阿部芳久教授と地球社会統合科学府の博士課程3年の鄔亜嬌(ウーアキョウ)大学院生は、クリタマバチの卵成熟様式が斉一成熟性であることを実験的に解明しました。虫こぶから脱出してきた雌成虫は生涯に産卵可能な平均232個の成熟卵を保有しており、産卵をさせない状態で日齢が進んでも成熟卵数は変化しませんでした(図3)。斉一成熟性は本種の分布拡大要因の一つであると考えられます。今もクリタマバチが分布を拡大中のヨーロッパやその近隣において、本種の分布拡大の予測や防除対策の立案をする際の基礎的知見として、本成果は役立つと期待されます。

 本研究成果は国際科学誌「European Journal of Entomology」に2022年7月8日(金)に掲載されました。

用語解説

(※1) 斉一成熟説
クリタマバチ雌成虫が虫こぶから脱出したときには生涯に産む卵を成熟させており、産卵させない状態で日齢が進んでも卵吸収はおこなわず、成熟卵数は変化しません。
(※2) 随意的逐次成熟説
クリタマバチ雌成虫は、産卵させない状態で日齢が進むと卵吸収をおこない、成熟卵数は減少します。

詳細

九州大学プレスリリースをご参照ください。

【参加者募集!(高校生向け)】令和4年度九州大学芸術工学部公開講座

九州大学と京セラが組織対応型連携を開始

関連記事

  1. SDGs Design Internationa…

    今年のテーマは「未来の食文化」をデザインしよう!今年のSDGsデザイ…

  2. 《11/26開催》第213回アジア・オセアニア研…

    吉原 一文 教授(キャンパスライフ・健康支援センター)九州大学アジア…

  3. 【11/22開催】 Lounge#3「地球環境変…

    ~令和の米騒動はなぜ起きた!!最近の地球環境変動は⾷料⽣産にどう影響する…

  4. 【10/25開催】第117回アジア・オセアニア研…

    九州大学 比較社会文化研究院 環境変動部門 藤岡 悠一朗 准教授…

  5. 第21回九州大学理学部生物学科公開講座

    第21回九州大学理学部生物学科公開講座九州大学理学部生物学科では、高…

  6. 鳴き声の順序に応じた行動変化:昆虫で初実証

    ツクツクボウシの「オーシンツクツク」と「ツクリヨーシ」の発音順序に対するオス…

  7. [6/24開催]第236回アジア・オセアニア研究…

    高須賀 圭三 助教(理学研究院)九州大学アジア・オセアニア研究教育機…

  8. アフリカの栽培イネが芒(のぎ)を失った理由

    ~アジアとアフリカで異なる遺伝子の選抜が起きたことを解明~ポイント…