~ ⿎膜器官(⽿)を多⾯的に利⽤している可能性を⽰唆 ~
ポイント
・ヒロズコガ科のシロナガヒロズコガ亜科は、熱帯を中⼼に世界に広く分布している。本亜科に含まれる種の幼⾍は⽊材に穿孔することが⽰唆されていたが、その⽣活史の詳細はまったく知られていなかった。
・本亜科に含まれるイッテンシロナガヒロズコガの幼⾍が、「ナラ枯れ」で枯死した直後の⽊材で発⽣することを発⾒し、その⽣態を世界で初めて解明した。
・今回の発⾒は、鱗翅類の⾷性や⿎膜器官の進化の研究に役⽴つことが期待される。
概要
ヒロズコガ科のシロナガヒロズコガ亜科は、熱帯を中⼼に世界に広く分布しています。本亜科に含まれる種の幼⾍は⽊材に穿孔することが⽰唆されていましたが、その⽣活史の詳細はまったく知られていませんでした。⼀⽅、本亜科の種はメイガ上科を除く⼩蛾類では例外的に成⾍が⿎膜器官(※2)をもつことが知られていましたが、なぜこの亜科の種だけがもつのかは不明でした。
2022年、本亜科に含まれるイッテンシロナガヒロズコガの幼⾍が、「ナラ枯れ」で枯死した直後の⽊材でおそらく甲⾍類の穿孔を利⽤して発⽣することを発⾒し、その⽣態を世界で初めて解明しました。今回の研究で、本種を含む本亜科の種は、雌雄の交信、コウモリへの対抗策、穿孔している甲⾍類幼⾍の探索に⿎膜器官を多⾯的に利⽤していることを⽰唆しました。
アマチュア研究者の児⽟洋⽒が2022 年に和歌⼭県橋本市で本種の幼⾍をナラ枯れによるコナラの枯死⽊の穿孔から発⾒し、得られた幼⾍を飼育しました。九州⼤学⼤学院農学研究院の廣渡俊哉教授は、このガの種を同定し幼⾍や蛹の形態を世界で初めて詳しく記載しました。
今回の発⾒は、鱗翅類(※1)の⾷性や⿎膜器官の進化の研究に役⽴つと思われます。また、このような鱗翅類の幼⾍の腸内フローラは、難分解性物質の分解に関わる応⽤研究への発展も期待されます。
本研究成果は国内の雑誌「Lepidoptera Science」に2023年10⽉3⽇(⽕)に公開されました。
用語解説
(※1) 鱗翅類:チョウやガを含む昆虫のグループ。翅や体が鱗粉で覆われるのが特徴。
(※2) 鼓膜器官:聴覚器官(耳)のこと。鱗翅類では主に夜行性のガ類の一部に見られ、コウモリが発す超音波への対抗策として獲得したと考えられている。
詳細
詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。