植物の乾燥耐性を向上させる化合物の開発

農学研究院
有澤美枝子 教授

ポイント

・植物に乾燥耐性を与える化合物を同定しました。
・気孔のK+チャネルを阻害する分子標的化合物を同定しました。
・気孔応答メカニズムを知るための分子ツールとして利用できます。

概要

 植物の葉にある気孔は、ガス交換や蒸散を担う一方、乾燥時には閉鎖して水分の損失を防ぐ性質を持ちます。気候変動対策として、農作物に乾燥耐性を付与する植物調節剤(バイオスティミュラント)の開発が求められています。
 東北大学、九州大学、ミラノ大学(イタリア)、新潟薬科大学、アストロバイオロジーセンター、名古屋大学、理化学研究所、熊本大学、静岡大学、岡山大学、CSIC(スペイン)、ミュンスター大学(ドイツ)の共同研究グループは、気孔の開口を促すカリウムイオン(K+)チャネルの阻害剤NS5806を同定し、さらにその類縁化合物UA49の合成にも成功しました。NS5806/UA49を植物に噴霧すると気孔の開口抑制(閉鎖誘導)が起こり、乾燥耐性が付与されることが実証されました。さらに本化合物を用いた解析から、K+チャネルが環境応答に重要なCaシグナル(注1)の生成に関与している可能性が示唆されました。本成果は、持続可能な農産物生産に貢献することが期待されます。
本研究成果は、2026年7月27日(英国標準時)に科学誌Nature Communications に掲載されました。
 なお本研究は、東北大学大学院工学研究科の佐藤奏音特任助教(現京都大学助教)、鈴木喬太大学院生(当時)、齋藤俊也学術研究員、筧太心大学院生(当時)、加藤恵技術職員、辻井雅助教、石丸泰寛准教授(現東京大学准教授)、魚住信之教授、九州大学大学院農学研究院の有澤美枝子教授、矢﨑雅菜大学院生(当時)、河合靖貴助教(当時)、ミラノ大学(イタリア)のCosta Alex教授、Grenzi Matteo研究員、Luoni Laura研究員、新潟薬科大学の山口利男教授、井坂修久助教、アストロバイオロジーセンターの河野優特任研究員、名古屋大学の木下俊則教授、林優紀助教、理化学研究所環境資源科学研究センターの関原明チームディレクター、バシル・クーラム客員研究員(現ラホール経営科学大学准教授)、アズィズ・ファルハン国際プログラム・アソシエイト、熊本大学の檜垣匠教授(現東京大学教授)、上村明日香大学院生、静岡大学の轟泰司教授、竹内純准教授、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の村田芳行教授、宗正晋太郎准教授、Yin Huifei大学院生(当時)、CSIC(スペイン)のRubio Francisco教授、ミュンスター大学(ドイツ)のKudla Jӧrg教授との共同研究で行われました。

用語解説

注1. Caシグナル:細胞が外部からの刺激(環境の変化や薬剤など)を受けた際に、細胞内のカルシウムイオン(Ca2+)濃度を変化させることで、「状況が変わった」という情報を細胞内へ伝える仕組みのこと。

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