台風の発達をもたらす黒潮の遠隔影響のメカニズムを解明
台風発達のエネルギー源は水蒸気の凝結に伴う潜熱ですが、台風発達理論において水蒸気は一体どのくらいの広さの領域(海域)から供給されているのか非常に曖昧でした。本研究で、九州大学大学院理学研究院所属、日本学術振興会特別研究員の藤原圭太氏と同大学院理学研究院の川村隆一教授は、台風の高解像度数値シミュレーションによって、秋季(特に10月)に、はるか南海上から日本に接近してくる台風に黒潮から蒸発した水蒸気が多量に流入しており、黒潮の海面水温の変化が水蒸気流入量の変化を通して台風強度に遠隔的な影響を与えていることを初めて明らかにしました。
台風強度を規定する主要因の一つである海面水温については従来から台風直下の海面水温のみが強調されてきました。しかし本研究は、台風直下の海面水温だけでなく、遠隔海域の海面水温の情報の精度も良くなければ、台風の強度予報は十分に改善されないことを示唆しています。また1990年代末から最近にかけて黒潮の高温傾向が顕著です。1980年代から1990年代中頃までの時代に比べて、近年は黒潮の遠隔影響がより顕在化して日本に接近する秋台風の強度を強めている可能性があります。台風活動の将来予測では、近年の黒潮の高温化が今後どのように推移していくのか注目していく必要があります。
本研究成果は、2021年11月22日に国際学術誌「Journal of Geophysical Research: Atmospheres」にオンライン掲載(早期公開)されました。また本研究はJSPS科研費(JP19H05696, JP20H00289,JP20J11837)の助成を受けました。
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九州大学プレスリリースをご参照ください。