小惑星ベヌー試料から核酸塩基と高濃度の尿素を検出

~小惑星環境での化学プロセスの絞り込みに成功~

理学研究院
奈良岡 浩 教授

ポイント

・小惑星ベヌーから持ち帰られたサンプルから核酸塩基など窒素を含む多種の有機分子を検出。
・多くの有機分子は低温環境における高濃度アンモニア及び尿素溶液中の反応で生成した。
・地球外環境における化学進化及び小惑星の起源に関する理解が飛躍的に発展。

論文情報

北海道大学低温科学研究所の大場康弘准教授、海洋研究開発機構の古賀俊貴研究員、高野淑識上席研究員、九州大学大学院理学研究院の奈良岡浩教授、東北大学大学院理学研究科の古川善博准教授らが所属する国際研究グループは、アメリカNASA主導の小惑星探査計画「OSIRIS-REx」で炭素質B型小惑星(101955)ベヌー(Bennu)から持ち帰られた粒子から、地球生命に必須の核酸塩基全5種を含む、合計38種の窒素複素環化合物*1、及び高濃度の尿素*2の検出に成功しました。

小惑星サンプルリターン計画「OSIRIS-REx」では、炭素質小惑星ベヌーで採取した試料(計121.6グラム)の分析が順調に進んでおり、既報(Glavin et al. 2025, Nature Astronomy)では、アミノ酸や核酸塩基など多様な有機物組成の存在を明らかにしました。

今回、ともに遺伝子RNA、DNAの構成成分である糖化合物及び核酸塩基類の詳細分析用として、約600ミリグラムの試料が日本の研究グループに配分されました。同一の試料からすでに、小惑星リターンサンプルでは初めてとなるリボースやグルコースなどの糖類が検出されています(Furukawa et al. 2026, Nature Geoscience)。今回の含窒素化合物の分析では、核酸塩基全5種を含む窒素複素環化合物38種(前述既報では20種)、及びアミノ酸や核酸塩基の合成材料の一つとして知られる尿素が検出されました。検出された窒素複素環化合物の種類はこれまでに分析されたどの地球外物質よりも多く、今回初めて検出された分子も含まれました。尿素は窒素複素環化合物の合計より8倍以上多く、ベヌー試料中に存在する単一の含窒素化合物として、アンモニア、メチルアミンについで3番目に多いことが分かりました。これは、検出された有機化合物が低温環境におけるアンモニア溶液中での反応で生成したという先行研究での知見を支持するとともに、小惑星ベヌー上での核酸塩基の生成過程として尿素を材料とした反応経路が支配的であったことを強く示唆します。さらにリボースと核酸塩基が同一サンプル内に存在するという結果は、生命誕生前の小惑星環境でRNAの主成分の大半が生成可能であることを示し、それらが原始地球上に供給されていたことを強く期待させます。

なお、本研究成果は、日本時間2026年4月2日(木)公開のCommunications Chemistry誌(英科学誌Natureの姉妹紙)の特集号、「Prebiotic Chemistry」にオンライン掲載されました。

用語解説

(*1)窒素複素環化合物 … 核酸塩基のように窒素原子が環状化合物の基本骨格の一部を構成する有機化合物のこと。

(*2)尿素 … 1828年にヴェーラーによって人間の手で初めて無機化合物から合成された有機化合物といわれており、生体の代謝産物としても知られる。

詳細

本件の詳細についてはこちら

お問い合わせ先

理学研究院 奈良岡 浩 教授

分子を「曲げる」ことで有機半導体の光耐久性を向上

赤ちゃん星が磁力線を吐き出す「くしゃみ」で新発見

関連記事

  1. 《12/24開催》第217回アジア・オセアニア研…

    河野 銀子 教授(男女共同参画推進室)九州大学アジア・オセアニア研究…

  2. 【9/11開催】令和6年度第4回I²CNER S…

    東北大学より 折茂 慎一 教授をお招きしますカーボンニュート…

  3. 電子機器の信頼性評価の迅速化に光明

    ~ 様々な中性子施設で半導体ソフトエラー評価を可能にする技術を開発 ~ …

  4. AIを活用し化学反応の理解を自動化する仕組みを開…

    ―深層学習による反応機構の解明をより容易に―先導物質化学研究所森 俊…

  5. 《2/21開催》第20回有機光エレクトロニクス産…

    ~テーマは「有機光デバイスの解析・分析技術」~ 有機光エレクトロニク…

  6. サイエンスとデザイン5「AIとヒト」

    サイエンスとデザイン5「AIとヒト」近年人工知能(Artificia…

  7. 【学内向け】『未来共創リーダー育成プログラム』プ…

    【学内向け】『未来共創リーダー育成プログラム』プログラム体験会について…

  8. ⾼性能電解質材料におけるプロトン導⼊反応の活性サ…

    ~ 中温で動作する固体酸化物形燃料電池の開発を加速 ~ポイント・…