分子を「曲げる」ことで有機半導体の光耐久性を向上

―光に強く高性能な次世代材料の開発に成功―

理学研究院
宮田 潔志 准教授

概要

合成・生物化学専攻の久田雅人博士後期課程学生、清水大貴助教、松田建児教授は、理化学研究所・Kirill Bulgarevich博士、瀧宮和男チームリーダー、分子工学専攻・筒井祐介助教、関 修平教授、九州大学・宮田潔志准教授と共同で、優れた半導体特性を持つことで知られる有機分子ルブレン(※1)の構造を改良し、骨格内に七員環を組み込んだ新しい有機半導体材料(縮環ルブレン:FR)の開発に成功しました。従来のルブレンは、炭素と水素のみから構成される有機半導体(※2)として最高クラスの性能を持つ一方で、光や酸素に弱く劣化しやすいという実用上の大きな課題がありました。本研究では、分子の骨格を繋ぎ合わせ(縮環)、さらに七員環を導入して分子を湾曲させることで、ルブレンの優れた性能を維持したまま、光に対する安定性を飛躍的に高めることに成功しました。また、ミクロな分子の曲がり方の違いによって光学的・電気的性質が変化することを明らかにし、次世代デバイスに向けた新たな材料設計指針を提示しました。

本研究は2026年2月18日、米国化学会の旗艦誌『Journal of the American Chemical Society』148巻6号に掲載されました。

用語解説

(※1)ルブレン
代表的な有機半導体分子の一つ。炭化水素分子の中でも極めて高い電荷移動度(電気の運びやすさ)を示すため、長年研究されてきました。しかし、光と酸素によって分解されやすい性質が実用化の課題となっていました。

(※2)有機半導体
炭素を主成分とする有機化合物でありながら、シリコンなどの無機半導体のように電気を流す性質を持つ材料。軽量で柔軟性があり、プリンターに使われているインクジェット技術を用いて塗布・印刷することで安価に電子デバイスを作製できるため、次世代のディスプレイや太陽電池の材料として注目されています。

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