「量子力学」と「一般相対性理論」を統合する「量子重力」の性質を明らかにする枠組みを構築

重力そのものが量子重ね合わせ状態にある必要がなく、同じ物理的予測を再現することが可能

高等研究院
フー・ジョシュア 准教授

ポイント

・現代物理学の二大柱、量子力学と一般相対性理論は単一の理論に統合する方法がまだ確立されていない
・本研究では「時空の重ね合わせの相対性(Relativity of Spacetime Superpositions)」の理論的枠組みを構築し、時空の特定の量子的重ね合わせを伴ういくつかのシナリオが、量子重力理論を仮定することなく再解釈できることを示した
・重力の量子的な性質を発見したことを証明する証拠が何であるかを解明することにつながる

概要

 原子以下の世界の振る舞いを説明する「量子力学」と、星や銀河の動きを支配する「一般相対性理論」は現代物理学の二大柱であり、これらを単一の理論に統合する方法については、まだ合意が得られていません。量子重力理論においては重力が量子重ね合わせの状態、つまり異なる状態を同時にとっているようなシナリオが想定されるべきであるという理論が、広く受け入れられています。近年、いくつかの理論的実験において、重力を介して相互作用する量子粒子の振る舞いを通じて、そのような効果を間接的に観測できる可能性が示唆されており、重力場の量子重ね合わせという概念を検証するための最も単純な手法を提供するものであるため、大きな関心を集めています。こうした実験の結果を解釈することは依然として大きな課題で、量子重力現象の真の証拠とは何であるかを理解するための新たな枠組みの開発が求められています。
 本研究では、九州大学高等研究院稲盛フロンティアプログラムのフー・ジョシュア准教授の研究グループがストックホルム大学のマグダレナ・ジッチ博士、ウォータールー大学の研究者と共同研究を行い、「時空の重ね合わせの相対性(Relativity of Spacetime Superpositions)」と呼ばれる理論的枠組みを構築しました。これは、時空の特定の量子重ね合わせを含む特定のシナリオが、量子重力理論を必要とせずにどのように再解釈できるかを記述するものです。これらのシナリオでは、重力そのものが量子重ね合わせ状態にある必要なく、同じ物理的予測を再現することができます。この枠組みを、重力による量子もつれ(エンタングルメント)や重力によるデコヒーレンスを伴う実験を含む、いくつかの有力な提案に適用したところ、量子重力効果の証拠として一般的に解釈されている多くのシナリオには、本質的な曖昧さが存在することが判明しました。
 本研究は実験を設計するための指針を提供し、どの観測が重力の古典的記述と量子的記述を区別できるかを特定することで、現代科学において最も注目されている理論の一つに関する証拠の探索範囲を絞り込みます。
 本研究成果は「npj Quantum Information」に2026年5月13日(水)に掲載されました。

研究者からひとこと

重力と量子力学がどのように結びついているかを理解することは、物理学における最大の課題の一つです。重力の量子的な性質を検証する前に、まず、それを発見したことを証明する証拠が何であるかを把握する必要があります。私たちの研究は、その疑問を解明するのに役立ちます。(フー・ジョシュア)

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高等研究院 稲盛フロンティアプログラム フー・ジョシュア 准教授

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