鳴き声の順序に応じた行動変化:昆虫で初実証

ツクツクボウシの「オーシンツクツク」と「ツクリヨーシ」の発音順序に対するオスの応答変化

理学研究院
立田 晴記 教授

ポイント

・鳴き声の構成要素の順序が聞き手の応答を変化させる事例は昆虫では知られていなかった。
・ツクツクボウシのオスに「オーシンツクツク」と「ツクリヨーシ」の順序を入れ替えた音声を聞かせた際、オスの”合の手”による応答が減少すること、またオスの応答のタイミングが異なることを初めて見出した。
・今後、オスの合の手の回数やタイミングがメスの行動にどう影響するかを調べることで、本種における音声コミュニケーションの適応的意義の解明に迫っていく。

概要

動物の中には複数の音声パターンを組み合わせた複雑な鳴き声を発するものがおり、哺乳類や鳥類などではよく研究されていました。一方でカエルや昆虫など、オスのみが鳴く動物での研究例は少なく、特に昆虫では鳴き声を構成する異なる領域(パート)の演奏順序の違いが聞き手の応答に影響する例は知られていませんでした。

九州大学大学院システム生命科学府 博士学生の児玉建さん(研究当時の所属)、および九州大学大学院理学研究院生物科学部門の立田晴記教授らの研究グループは、ツクツクボウシのオスが発する鳴き声のうち、「オーシンツクツク」と聞こえるパートと「ツクリヨーシ」と聞こえるパートの再生順序を入れ替えた音声を作成し、捕獲したオスに聞かせる実験を行いました。ツクツクボウシのオスが同種オスの鳴き声に合わせて「ギーッ」と鳴く”合の手”と呼ばれる発音の頻度を比較したところ、通常の順序と比べて逆の順序の鳴き声に対する合の手の回数は大きく減少しました。また合の手が発せられるタイミングを比較したところ、通常の順序の音声で「ツクリヨーシ」と聞こえるパートが再生される際に最も多くの合の手が発せられました。

本研究では、鳴き声における異なるパートの再生順序を入れ替えることで、聞き手であるオスの応答が変化する現象を、昆虫類で初めて見いだしました。これはツクツクボウシが他個体が発する鳴き声の順序に基づき、自身が合の手を発するタイミングを柔軟に調整していることを意味しています。今後は本種の音声コミュニケーションの実態解明のため、オスの合の手が持つ繁殖上の意義についてさらなる研究が必要です。

本研究の成果は、ドイツ動物行動学会(Ethologische Gesellschaft)が発行する国際誌「Ethology」に2026年1月14日(水)(日本時間)にオンライン掲載されました。

研究者からひとこと

セミは日本人にとって馴染み深い昆虫ですが、実はその生態はほとんど研究されておらず、謎多き生き物です。ツクツクボウシも日本ではありふれたセミですが、その鳴き声は世界的にも類を見ないほどに複雑で個性的です。学部生の頃からずっとツクツクボウシの研究をしてきましたが、未だに毎年新しい発見があります。次のお盆が過ぎる頃、ぜひこの美しくも奇妙な鳴き声に耳を傾けてみてください。(児玉 建)

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理学研究院 立田晴記 教授

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