マイクロ波を用いて脂肪酸エステルを効率的に低級オレフィンに変換

農学研究院
椿 俊太郎 准教授

マイクロ波による脱炭素化触媒プロセスの構築に貢献

ポイント

・廃食用油や微細藻類由来のオイルの有効利用が望まれる
・マイクロ波(※1)を用いて脂肪酸エステルを効率的に低級オレフィンに変換する触媒反応を開発
・ナフサに代わる、バイオマス由来の低級オレフィン製造に期待

概要

 原油からナフサを経由して製造されるエチレンやプロピレンなどの低級オレフィンは、プラスチックをはじめとする様々な製品の原料として重要な基幹化合物です。一方、脱炭素化社会の実現に向けて、廃食用油や微細藻類由来のオイルなどの再生可能なバイオマス資源から低級オレフィンを製造する新しい触媒反応の開発が求められています。
 九州大学大学院生物資源環境科学府食品製造工学研究室 修士課程2年の大田駿介氏、九州大学大学院農学研究院の椿俊太郎准教授、井倉則之教授、九州大学大学院総合理工学研究院の永長久寛教授、株式会社レゾナックの手塚記庸氏、佐藤孝志氏、高エネルギー加速器研究機構の君島堅一特別准教授、木村正雄教授および東北大学大学院工学研究科の福島潤助教の研究グループは、電子レンジにも用いられるマイクロ波加熱を用いて脂肪酸エステルを効率的に低級オレフィンに変換する触媒反応を開発しました。ゼオライト(※2)触媒はもともとマイクロ波で加熱されにくい材料ですが、ZSM-5と呼ばれるゼオライト触媒にナトリウムイオンを導入することで、マイクロ波による加熱されやすさを向上しました。さらに、Na型ZSM-5は、炭素析出や芳香族化などの副反応を抑制し、低級オレフィンが高選択的に得られることを発見しました。放射光(※3)施設 高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーにてマイクロ波照射中のゼオライト触媒の構造を「その場」でX線回折(※4)測定することにより、ゼオライト上に局所的な高温の反応場が形成され、反応が促進することを突き止めました。
 本研究成果はElsevierの「Chemical Engineering Journal」誌に2024年8月10日(土)(日本時間)にオンライン掲載されました。

研究者からひとこと

家庭用の電子レンジにも用いられるマイクロ波加熱は、物質を効率的かつ高速に加熱できます。さらに、普及が進む太陽光や風力など再生可能エネルギーに由来する電気エネルギーを効率的に用いた化学プロセスの「産業電化」によって、脱炭素化に貢献することが期待されています。

用語解説

(※1) マイクロ波
周波数が300 MHz~30 GHzの電磁波の一種で、通信(携帯電話、Wi-Fiなど)やレーダーとして広く利用される。2.45 GHzや5.8 GHz の特定の周波数は、家庭用電子レンジや産業用加熱装置としても利用される。

(※2) ゼオライト
結晶性アルミノシリケートであり、分子ふるい作用と、固体酸としての性質がある。石油化学系の触媒プロセスや、アルコールの脱水、水の浄化、洗剤などにも用いられる。

(※3) 放射光
加速器によって、ほぼ光の速度に加速された電子や陽電子から方向を揃えてつくられる光。放射光を用いて、物質の構造解析、材料の創出、半導体などの超微細加工、新薬の創出に向けたタンパク質の構造解析などの計測が行われる。

(※4) X線回折
X線の回折パターンから物質の結晶構造を解析する手法。一般的な実験室では、銅(Cu kα)の特性X線(1.5418Å)が用いられる。放射光施設では、任意の波長のX線を用いたX線回折測定が可能。

お問い合わせ先

農学研究院 椿 俊太郎 准教授

詳細

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