エキゾチック対称性を持つ理論の存在を示唆する解析的・数値的証拠を発見
高等研究院
カイディ ジャスティン 准教授
ポイント
・共形場理論(※1) は臨界現象における普遍的な性質を記述するが、Haagerup融合圏(※2)を対称性(※3)として実現する共形場理論は十分に解明されていなかった。
・数学的に存在が予言されていたある種類の共形場理論の存在を仮定すると、その理論が実際にHaagerup対称性(※4)を持つことを解析的に明らかにした。さらに、対称性によって強化された「モジュラーブートストラップ(※5)」によってこの対称性を備えた共形場理論についての新たな数値的証拠を得た。
・本研究で得られた知見はHaagerup対称性を持つ理論の解明に留まらず、無理共形場理論(※6)をはじめとする未知の共形場理論を解明するための重要な手がかりになると期待される。
概要
「対称性」は理論物理学において中心的な役割を果たしており、物理系を特徴づける強力な道具です。特に、2次元共形場理論では豊富な種類の対称性が実現されており、それらは融合圏という数学的枠組みで記述されます。しかし、Haagerup融合圏で記述される対称性を実現する2次元共形場理論は未だ知られておらず、その実現は長年の未解決課題です。
九州大学高等研究院のKaidi Justin准教授、大学院理学府の本田大和博士課程大学院生、プリンストン大学のJan Albert 研究員、中国科学院大学カブリ理論科学研究所のYunqin Zheng助教からなる共同研究グループは、数学者によってその存在を予言された、ある共形場理論がHaagerup融合圏をなす対称性を実現していることを解析的に明らかにしました。また、対称性によって強化された「モジュラーブートストラップ」と呼ばれる最新の数値的手法を用いて、この対称性を有する理論の存在を裏付ける新たな数値的証拠を得ました。これらの結果は、Haagerup融合圏を実現する共形場理論を巡る謎の解明に向けた大きな一歩となるだけでなく、無理共形場理論をはじめとする未知の共形場理論の発見にも繋がることが期待されます。
本研究成果は米国物理学協会発行の学術誌「Physical Review Letters」のオンライン版に、2026 年3 月2日 (月) 付で公開されました。
研究者からひとこと
これまで主に数学の文脈で研究されてきたHaagerup対称性が、実際の物理理論として現れる可能性を示す結果が得られました。今後、このエキゾチックな対称性の物理的理解がさらに進むことを期待しています。(Kaidi Justin准教授)
用語解説
(※1) 共形場理論
共形変換と呼ばれる、並進・回転・拡大縮小などの変換の下で性質が変わらない場の量子論。
(※2) 融合圏
数学的構造の一つであり、ある意味で群という構造を一般化した概念。
(※3) 対称性
ある変換を加えても物理法則や理論が変わらないという性質のことで、物理系を特徴づける最も重要な概念。
(※4) Haagerup対称性
デンマークの数学者Uffe Haagerupにちなんで名付けられたHaagerup融合圏に基づく、通常の群対称性では表せない非常に珍しいタイプの対称性。
(※5) モジュラーブートストラップ
モジュラー不変性と呼ばれる共形場理論が満たすべき整合性条件を用いて、この条件と不整合な理論を排除する手法。
(※6) 無理共形場理論
中心電荷が無理数である共形場理論の総称。中心電荷が有理数である有理共形場理論が深く理解されている一方で、無理共形場理論はそのほとんどが未解明である。
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