⽣物が陸上⽣活に適応するための分⼦メカニズムを発⾒

~ 海中から陸上へ、進化の謎の⼀端を解明 ~

ポイント

・陸上では海中の数⼗倍から数千倍の活性酸素が存在する。
・本研究では、陸上での⾼濃度の活性酸素に適応するための進化のメカニズムを発⾒した。
・もしこの進化が起こらなければ、動物の陸上⽣活は不可能だったと推測される。

概要

 ⽣物は進化の過程で海中から陸上へ進出しましたが、陸上での⽣活に適応するために様々な変化が必要であったと推測されています。陸上では⾼濃度の酸素と太陽からの紫外線の影響により、⽣体に有害な活性酸素(※1)が発⽣します。このため陸上⽣物は活性酸素に対する防御機構を⾼める必要がありましたが、どのようなメカニズムでそれを達成したのかは⻑らく不明でした。
 九州⼤学⽣体防御医学研究所の中⼭ 敬⼀ 主幹教授、⼸本 佳苗 助教らの研究グループは、動物が陸上の⾼い活性酸素に適応するための進化のメカニズムを新たに発⾒しました。
 活性酸素に対する防御機構には転写因⼦Nrf2 が重要な役割を果たします。Nrf2 の量はKeap1 というユビキチンリガーゼ(※2)による分解によって巧妙に調節されています。本研究グループは、海中⽣物が所有する海型Keap1(Nrf2分解活性が強い→Nrf2が低い→活性酸素に弱い)が進化の過程でゲノム重複によって⼆つになり、そのうち⼀⽅が陸型Keap1(Nrf2分解活性が弱い→Nrf2が⾼い→活性酸素に強い)として残った結果、⾼い活性酸素存在下でも⽣存できるようになったことを突き⽌めました。そこで、本来のKeap1(陸型)を⼈⼯的にKeap1(海型)に置き換えた遺伝⼦改変マウスを作製し、これに太陽光レベルの紫外線を照射したところ、ほとんどが⾼い活性酸素に耐えきれずに死んでしまいました。つまり、もし海型 Keap1 から陸型 Keap1 への遺伝⼦の進化が起こらなければ、ヒトも含めた動物は陸上では⽣きられなかったことを⽰しています。
 本研究結果は、どのように⽣物が海から陸への⽣活に適応したかに関して新たな知⾒を加えるものです。また、活性酸素はがんや⽼化・加齢性疾患の原因ともなることより、これらの疾患治療への応⽤が期待できます。本研究成果は⽶国の雑誌「Science Advances」に 2023 年 5 ⽉ 20 ⽇(⼟)午前4 時(⽇本時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) 活性酸素: ⼤気中の酸素よりも活性化された酸素およびその関連分⼦で、酸素原⼦を含む反応性の⾼い化合物の総称です。適度なレベルの活性酸素は、細胞の正常な機能に必要不可⽋な役割を果たしていますが、過剰の活性酸素は細胞や組織を傷つけ、酸化ストレスを引き起こします。
(※2) ユビキチンリガーゼ:タンパク質の特定の部位にユビキチンと呼ばれる⼩さなタンパク質を付加する酵素を指します。ユビキチンを付加されたタンパク質はプロテアソームという酵素により分解される運命をたどります。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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