廃棄物から資源へ:CO₂とプラスチックを太陽光で同時に有用化学品に変換する単一触媒を開発

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
Edalati Kaveh 准教授

ポイント

・新規「ハイエントロピー酸化物(HEO※1)」触媒を用い、二酸化炭素(CO₂)とプラスチック廃棄物という二つの主要な環境汚染物質を、光を利用して同時に有用化学品へと変換する光触媒※2システムを開発。
・CO₂は95%以上の選択性で一酸化炭素(CO)へ、ポリエチレンテレフタレート(PET)プラスチックはメタン、グリコール酸、酢酸、そしてリサイクル原料へと分解。
・この一括処理プロセスは、従来必要だった犠牲剤※3を不要とし、気候変動とプラスチック汚染の双方に同時に対処する、スケーラブルな太陽光駆動技術の道筋を示す。

概要

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(WPI-I2CNER)のNguyen Thanh Tam学術研究員、中村潤児特任教授、Edalati Kaveh准教授らの研究チームは、CO₂排出とプラスチック廃棄物という二つの深刻な環境問題に、単一のプロセスで同時に対処する画期的な光触媒システムを開発しました。独自に設計した「ハイエントロピー酸化物」触媒を用いて、CO₂とPETプラスチックを、光エネルギーだけで有用な化学製品に同時変換することに世界で初めて成功しました。

従来のCO₂変換やプラスチックリサイクルのアプローチは、通常、一度に一つの汚染物質のみを処理し、エネルギー集約的である上、機能させるために追加の化学試薬(犠牲剤)を必要とすることが一般的でした。この新システムは、CO₂とプラスチックを相補的な反応パートナーとして利用することでこれらの限界を克服します。光によって生じた電子はCO₂を還元し、同時に生じた正孔はプラスチックを酸化・分解します。これにより、無駄な添加物を一切必要としない、相乗的で効率的な酸化還元サイクルが実現します。

本技術の中核は、高圧ねじり加工により合成された新規多成分触媒BaTiNbTaZnO₉です。放射光X線分光法で確認されたその歪んだ原子構造は、異なる金属カチオンを組み込んでおり、可視光吸収、効率的な電荷分離、CO₂吸着サイトの提供、そして複雑な二重反応の駆動を協調的に実現します。この太陽光駆動プロセスは、根強い環境汚染物質を削減するだけでなく、広く蔓延するマイクロプラスチックの分解への新たな有望な道筋も提供します。

本成果は、環境負荷を価値ある資源へと変える、スケーラブルな「廃棄物から燃料へ」のコンセプトを確立するものです。持続可能な化学品生産と環境修復のための統合型光触媒プラットフォームに向けた重要な飛躍であり、循環型経済とカーボンニュートラルの目標に直接貢献します。

本研究は、Wiley-VCH社の学術誌『Small』に2026年1月28日(水)付で掲載されました。

研究者からひとこと

CO₂とプラスチック廃棄物を太陽光だけで同時に資源化する革新的光触媒技術を開発しました。独自のハイエントロピー酸化物触媒により、世界初となるCO₂還元とPET分解の一体プロセスを実現。廃棄物を価値ある化学品へ転換する新たな循環型技術として、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
(Edalati Kaveh准教授)

用語解説

(※1) ハイエントロピー酸化物(HEO)
五つ以上の主要金属カチオンをほぼ等モル比で含む新規セラミックス材料の分類。その高い配置エントロピーは、強化された耐久性や触媒用途における調整可能な機能性などのユニークな特性を持つ単一の固溶体相を安定化する。

(※2) 光触媒
物質(光触媒)が光エネルギーを吸収し、自身は消費されることなく化学反応を加速するプロセス。水分解や太陽光を用いたCO₂変換などのエネルギー集約的反応を駆動するためによく用いられる。

(※3) 犠牲剤
光触媒系に添加され、一方のタイプの光生成電荷キャリア(例えば正孔や電子)を消費し、他方のキャリアでの所望の反応の効率を改善するための化学試薬。その消費はプロセスを非持続可能かつ高コストにする。

詳細

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お問い合わせ先

カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所 Edalati Kaveh 准教授

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