反応における官能基情報を評価する「官能基評価キット」を開発

~精度の高い有機合成のデータベース構築への第一歩として期待 ~

ポイント

・化学反応において様々な官能基がどのような影響を与えるかを網羅的に評価できる「官能基評価キット(FGE kit:Functional Group Evaluation kit)」を開発しました。
・各官能基による影響の評価には、有機合成分野ではこれまでほとんど用いられてこなかった統計的手法を採用しました。
・高度化する医薬品合成ルート探索のためのデータベースを構築する上で、重要な情報源となることが期待されます。

概要

 人工知能や機械学習は近年急速に発展し、様々な分野で利用され始めていますが、有機合成化学の分野では未だ発展途上です。近年、既知の情報を元に合成経路を提案するツールが開発・利用され始めましたが、医薬品候補化合物や天然物などの複雑化合物に適用するには未だ不十分です。複雑化合物の合成予測を難しくする要因の一つとして、化合物に複数の異なる官能基(※1)が共存することがあげられます。官能基は反応の結果に大きな影響を与えますが、その影響について信頼性の高いデータベースは存在せず、既存のデータベースに基づく予測の精度低下につながっていました。
 九州⼤学⼤学院薬学研究院の⼤嶋孝志教授、森本浩之講師(当時、現 九州工業大学大学院工学研究院 物質工学研究系 准教授)、齋藤菜月大学院⽣(当時)、縄稚杏奈⼤学院⽣らの研究グループは、官能基の情報を網羅的に収集可能なツールとして「官能基評価キット(FGE kit)」を開発しました。本研究では、医薬品や天然物に見られる官能基をもつ26種類の化合物群を官能基評価キットとして用意し、添加剤として反応に共存させることで、官能基が反応に与える情報を収集しました。得られた情報は、これまで有機合成化学の分野ではほとんど用いられてこなかった統計的手法によって処理し、評価しました。統計的手法を採用したことにより、信頼性の高いデータベースを構築可能となります。
 本研究成果は、日本化学会が出版する国際誌「Bulletin of the Chemical Society of Japan」のオンライン版に2023年4月19日(水)(日本時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) 官能基
有機化合物中に⾒られる特定の原⼦の集まり。化合物の性質を特徴づける。ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基など。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

「糸島市定期情報紙 (第44号) 」発行されました

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