家畜の暑熱ストレス耐性と腸内環境

-環境保全型畜産管理に貢献する好熱菌の機能性評価-

農学研究院
髙橋 秀之 准教授

概要

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター粘膜システム研究チームの大野博司チームディレクター、宮本浩邦客員主管研究員、環境資源科学研究センター環境代謝分析研究チームの菊地淳チームディレクター、黒谷篤之特別研究員(研究当時)、光量子工学研究センター光量子制御技術開発チームの守屋繁春専任研究員、和田智之チームディレクター、九州大学大学院農学研究院の山野晴樹大学院生、髙橋秀之准教授、広島大学大学院統合生命科学研究科の稲生雄大助教、北里大学医療衛生学部血液学研究室の佐藤隆司講師らの共同研究グループは、累積60万羽を超える採卵鶏の大規模調査の結果、高温環境下での鶏の死亡率を下げる飼育管理手法として好熱菌[1]群を活用した高温発酵飼料を溶液にして投与することが効果的であり、腸内環境の変化が暑熱ストレス耐性に関与し得ることを確認しました。

本研究の成果は、質の高い高温発酵飼料の活用が、高温条件下における家畜の生命維持につながることを示すとともに、その作用機序として腸内細菌叢(さいきんそう)の制御が重要である可能性を示唆しています。

地球温暖化がますます加速する中で、生命を脅かす暑熱ストレスが看過できなくなっています。「人」と「動物」と「環境」を包括的に捉えて守る「One Health(ワンヘルス)[2]」という概念の重要性が国際的に強調される中で、さまざまな分野で環境配慮型の新たな持続可能技術の開発が求められています。本研究では、高温発酵技術を活用することで、暑熱ストレス環境で飼育した鶏の死亡率が下がることを見いだすとともに、実際に糞便(ふんべん)を対象とした計算科学的なアプローチによって、高温発酵飼料が腸内細菌叢の構成比率と短鎖脂肪酸[3]の組成比率のバランスを改善している可能性を明らかにしました。

本研究は、Springer Natureの科学雑誌『Animal Microbiome』オンライン版(2月3日付)に掲載されました。

補足説明

[1] 好熱菌
50℃以上で増殖能を有する細菌群の総称。温泉や海底熱鉱床などに生息する。

[2] One Health(ワンヘルス)
人や動物・環境諸因子全体を、健康のための対象として捉えて、一体的に守る考え方を指す。

[3] 短鎖脂肪酸
主に腸内細菌が食物繊維を分解する際に産生される栄養素の一種で、直鎖の炭素鎖が短い脂肪酸のことを指す。主な代表例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがある。腸管内では、主に腸内細菌による発酵作用によって産生される。

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農学研究院 高橋秀之 准教授

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