植物型α1,3/α1,4-フコース転移酵素が持つユニークなI型二糖構造認識機序を明らかにしました

概要

Lewis 三糖構造は、動物、植物、細菌に広く共有される糖鎖構造であり、細胞間相互作用を含むさまざまな生命現象の調節に重要な役割を果たしています。この糖鎖構造は、基本骨格(I 型/II 型二糖構造)の違いに応じてLewis A(I 型)またはLewis X(II 型)といった2種の形態に分類されますが、これらの合成比率は生物種に応じて大きく異なり、特に、植物ではLewis A 三糖構造しか合成されません。
 本事象は、合成経路の最終段階を担う「α1,3/α1,4-フコース転移酵素ファミリー」の基質選択性が多様であることと深く関連しています。しかし、なぜ植物において本酵素がII 型二糖構造を利用せず、Lewis A 三糖構造のみを合成するのか、その分子機序は不明なままでした。
 今回、佐賀大学の岡田貴裕助教、九州大学の角田佳充教授らの研究グループは、マンゴー由来α1,3/α1,4-フコース転移酵素のX 線結晶構造解析を実施し、糖鎖基質の選択性に寄与する構造的要因を検討しました。これにより、本酵素の糖鎖結合ポケットの構造がI 型二糖構造との相互作用に最適化されており、II 型二糖構造が結合できない形状になっていることが明らかとなりました。さらに、ヒト由来オルソログや細菌由来オルソログとの比較から、植物型α1,3/α1,4-フコース転移酵素が独自の進化を遂げ、Lewis A 三糖構造の生合成に特化した厳密な糖鎖認識機序を獲得してきたことを裏付ける知見を得ました。
 以上は、α1,3/α1,4-フコース転移酵素のI 型糖鎖認識機序に関する初の報告であり、また植物オルソログの立体構造を解明した初の成果でもあります。本研究成果は、2024年2月20日に国際学術誌「Glycobiology」オンライン版に掲載されました。

研究に関するお問い合わせ先

農学研究院 角田 佳充 教授
農学研究院 寺本 岳大 助教

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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