光を使って地中の有機物と微生物活性を推定する新手法を開発

〜野外における炭素循環研究の効率向上に期待〜

ポイント

・土壌からの反射光を解析することで土壌有機物やCO2放出速度を推定する手法を提案。
・小型分光器で森林土壌の短波長赤外領域の分光反射率を深度別に計測。
・非破壊的かつ迅速な炭素動態モニタリングの発展に期待。

概要

 北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの中路達郎准教授、信州大学理学部理学科物質循環学コースの牧田直樹准教授、九州大学大学院農学研究院の片山歩美助教、国立環境研究所生物多様性領域の小熊宏之室長の研究グループは、野外の森林土壌中の有機物組成とそれが微生物に分解されることによって生じるCO2の放出速度を非破壊的かつ迅速に推定する新しい観測法を開発しました。
 森林の土壌には莫大な量の炭素が有機物の形で貯蔵されており、微生物はその一部を分解して大気中にCO2を放出しています。一般に、野外の土壌有機物組成の調査では、土壌の採取と室内分析が必要で、CO2放出速度の調査ではガス分析計が使用されてきました。しかし、この方法には現場の土壌環境を攪乱してしまう、調査地点数を増やしにくい、時間がかかるといった課題がありました。
 そこで研究グループは、短波長赤外領域(波長1000~2500nm)の反射光が有機物や水分の情報を反映することに注目し、地中に挿した光ファイバーと小型分光器によって計測した分光反射率をもとに、深さごとの土壌有機物の組成とそれらと関連する微生物によるCO2放出速度が推定できることを示しました。今回開発した手法は、野外での炭素循環に関わる調査研究の効率を向上させ、深度ごとの地中の炭素量マッピングやCO2放出の多地点モニタリングへの貢献が期待されます。
 なお、本研究成果は、2023年6月21日(水)公開のAgricultural and Forest Meteorology誌に掲載されました。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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