光が金属の中を突き進む!

~ 相対論効果が拓くレーザーイオン加速の新世界 ~

ポイント

・光が入らない物質の中へレーザー光を侵入させ通り抜けさせる「相対論的透過現象」の実験に成功。アインシュタインが唱えた相対論による現象を超高強度レーザーで実現。
・「相対論的透過現象」に基づくレーザー駆動により発生するイオンビームの加速効率は従来の2倍となり、世界最高効率まで飛躍的に向上。
・本成果により、従来型加速器に比べて、よりコンパクトかつ高効率のレーザー駆動型加速器の実現に期待。

概要

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫、以下「量研」という。)量子ビーム科学部門関西光科学研究所(以下「関西研」という。)の西内満美子上席研究員、英国インペリアルカレッジロンドンのNicholas Peter Dover研究員、独国ドレスデンヘルムホルツ研究所のTim Ziegler博士研究員、Karl Zeilグループリーダー、Ulrich Schramm部長、九州大学大学院総合理工学研究院の榊泰直客員教授(量研上席研究員)らの国際共同研究グループは、J-KARENおよびDracoシステムの高強度レーザー光による相対論的透過現象を実現し、従来よりも2倍高い効率で高エネルギーイオンを発生することに成功しました。
 一般的にレーザー光が金属のような不透明物質を透過することは不可能と考えられています。ところが、理論的には、超高強度レーザーを不透明物質に照射すると、レーザー光が表面で吸収されず、不透明な物質中に侵入・透過する「相対論的透過現象」が起こることが予測されています。我々は、時間波形を最適化した超高強度レーザーパルスを膜状物質に照射することで、「相対論的透過現象」起こすことに成功しました。さらに、その現象発生に伴い、照射エリアの全ての膜状物質が電離・分極し、その分極により膜状物質内に生じたイオンの塊が1ミクロンメートル以下の短いスパンで光速の40%まで加速されることを観測しました。従来手法では膜状物質表面のイオンのみ加速されたのに対し、今回の実験では、膜状物質の表面から裏面までの全ての領域のイオンが加速され、その結果、世界最高の加速効率(従来の2倍以上)を得ることが出来ました。
 本研究成果は、将来の重粒子線がん治療への応用が見込まれる小型の高効率レーザー駆動重イオン加速器の実現に加え、イオンの加速エネルギーの高エネルギー化を進めることで宇宙誕生初期に物質が合成された過程等、元素の起源解明へとつながることが期待されます。
 本国際共同研究は、量研の国際リサーチイニシアティブ・創成研究、及び日本学術振興会・研究費補助金22H00121、21KK0049の支援を受けて実施されました。
 本研究成果はSpringer社が発刊するNature姉妹誌『Light: Science & Applications』に2023年3月13日(月)(日本時間)に掲載されております。

詳細

詳細はプレスリリースをご参照ください。

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