~半導体量子コンピュータの実現に向けて~
ポイント
・半導体量子コンピュータの実現に向けて、量子ドット2次元配列における電子スピン制御の実現が必要
・スピン制御用の微小磁石について、2行2列量子ドット配列用の設計手法を新たに開発した
・量子ドット2次元配列の電子スピン制御の実現とその後の大規模集積化への展開、および半導体量子コンピュータの実現に向けた貢献に期待
概要
量子力学に基づいて計算を行う量子コンピュータ(※1) が、スーパーコンピュータを凌ぐ計算能力を実現する次世代の情報処理技術として注目されています。現在、様々なハードウェア候補が研究されており、その有力候補の一つが、微小な半導体(量子ドット)に閉じ込められた電子スピン量子ビットです。現在、電子スピン量子ビットの高精度制御や量子ドット集積化など、基盤技術の開発が急速に進められています。これまで、電子スピン制御については、量子ドット近傍に設置した微小磁石が用いた高精度制御が実現しています。ところが、大規模集積化には量子ビットを2次元的に配列することが重要ですが、微小磁石を用いた電子スピン制御は量子ドット2次元配列においてはまだ実現できていません。
九州大学大学院システム情報科学研究院の木山治樹准教授、大阪大学産業科学研究所の中村駿吾大学院生(研究当時)、大岩顕教授の研究グループは、量子ドット2次元配列における電子スピン制御の実現に向けて、微小磁石が発生する磁場分布の数値シミュレーションにより、2行2列量子ドット配列用の微小磁石形状設計手法を開発しました。形状最適化の結果、シリコンを材料とした量子ドットでは精度99%以上が見積もられ、誤り耐性に必要な高精度制御が期待されます。
今回の成果をもとに、量子ドット2次元配列の電子スピン制御の実現とその後の大規模集積化への展開が期待されます。半導体量子コンピュータの実現に向けた貢献が期待されます。
本研究成果は 2022 年 12 月 8 日(木)に米国物理学協会の学術誌「Journal of Applied Physics」にオンライン掲載されるとともに、Featured Articleと表紙に採用されました。
用語解説
(※1) 量子コンピュータ
量子力学では、異なる状態の重ね合わせや粒子間の複雑な絡み合い(量子もつれ)のような古典力学では許されない状態を取り得る。このような量子力学特有の状態をリソースとして計算に利用するのが量子コンピュータである。従来の計算機に比べて桁違いの処理能力を有すると期待されている。
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