群れをなし,働き始めた分子ロボット

〜実働するマイクロサイズの分子ロボットを世界に先駆けて開発することに成功〜

ポイント

・分子ロボットに群れという協働作業戦略を取り入れることで物質輸送という実効的な仕事を達成。
・群れを利用することで分子ロボット単体と比べ輸送効率は最大 5 倍,積荷サイズを 10 倍に拡大。
・薬剤の運搬や選択,汚染物質の回収など様々な現場で活躍するロボットとして期待。

概要

 北海道大学大学院理学研究院のモウシュミ・アクタ博士研究員,角五彰准教授及び佐田和己教授,九州大学大学院芸術工学研究院の井上大介助教,名古屋大学大学院工学研究科の浅沼浩之教授,関西大学化学生命工学部の葛谷明紀教授らの研究グループは,生き物の生存戦略の一つでもある「群れ」の利点を取り入れた実働するマイクロサイズの分子ロボットを世界に先駆けて開発することに成功しました。

 近年,「群ロボット*1」という群れの様々な機能に着目した研究が注目を集めてきました。ロボットを群れとして利用することで,作業の分担やリスク対応,また環境に適したフォーメーションが可能となるなど,単体のロボットにはない機能を持たせることができます。医療や災害現場での応用が期待されており,これまでに数多くのロボットが開発・提案されてきました。近年の技術進歩により,ロボットはマイクロスケールやナノスケールまで小型化されましたが,サイズの小ささゆえ,これらのロボットを実働させるには至っていませんでした。

 本研究では,群れの形成解離を遠隔で操作する分子機構を導入することで,分子ロボットによる物質輸送という実効的な仕事の遂行に成功しました。分子ロボットは直径25ナノメートル,全長は5マイクロメートル(髪の毛の20分の1)程度のサイズで,駆動系としてモータータンパク質*2,制御系としてDNA分子コンピュータを持ち,光を感知するフォトクロミック色素を組み込むことで,遠隔操作を可能にする受信部としての役割を果たしています。群れを利用した分子ロボットが,単体では実現し得なかった数十マイクロメートルサイズという大きな物質を輸送できるようになりました。分子ロボット単体と比べると約5倍の輸送効率の向上,積荷サイズは10倍にも拡大されています。さらに積荷の輸送先は光(紫外光)を照射するだけで任意に指定することも可能としました。

 将来は,医療現場や環境保全などで活躍するマイクロナノマシンとしての応用が期待されます。本研究成果は,日本時間2022年4月21日(木)午前4時公開のScience Robotics誌に掲載されました。

用語解説

*1 群ロボット … 多くの単純なロボットから構成されるロボットシステム。ロボット間で相互作用しながら群れとして行動することで,単体のロボットにはできない複雑な仕事を効率よくこなすことができる。鳥や魚,昆虫などの群れが群ロボット開発のヒントになっている。

*2 モータータンパク質 … アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解によって生じる化学エネルギーを運動に変換するタンパク質。生物のほとんどすべての細胞に存在しており,物質の輸送や細胞分裂に関わっている。アクチン上を動くミオシン,微小管上を動くキネシンやダイニンが知られている。本研究では微小管とキネシンを使用した。

詳細

詳細につきましては、こちらをご参照ください。

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