イカの体色変化による音響映像作品

~生命現象を用いた映像表現の可能性~

 イカは、神経を介した電気信号によって色素胞(※1)と呼ばれる細胞を制御することで、みずからの体の色を素早く変化させることができます。今回東京藝術大学芸術情報センターの横川十帆教育研究助手(本学卒業生)、九州大学芸術工学研究院の増田展大講師、城一裕准教授らの研究グループは、この体色変化を電気的に誘発する音響映像作品《Chromatophony》(クロマトフォニー)(横川・牟田,2018)の分析を通じ、メディア研究と視覚文化論の観点からピクセルに依らないバイオアート(※2)としての映像表現の可能性を示しました。
 イカの色素胞は筋繊維の収縮によって色素を含む袋が引き伸ばされることで色が現れる構造をしています。今回の研究では、イカの外套膜に電極をとりつけ、スピーカーを鳴らす音声信号を、色素胞を刺激する電気刺激としても用いることで、音楽と映像とが完全に同期した作品を実現しました。本作品では、色素胞に最適化した電気刺激を音響信号として生成し、その信号を用いて音楽を制作しています。音楽と同期してリズミカルに動き、都度変化する色素胞は自然現象でありながら、デジタルイメージに慣れた私たちの目にはコンピュータグラフィックスのようにも映ります。本研究では、イカとヒトの共創とも言える本作品を、ピクセルで構成されたこれまでのデジタル画像と視覚文化論的な観点から比較するとともに、生命現象に基づく映像表現“Living Image”としての可能性を、バイオアートをめぐる展開の一つとして探りました。
 本研究成果は2021年12月14日に国際誌「Leonardo」にオンライン速報版が掲載されました。

用語解説

(※1)色素胞
色素を含む細胞。頭足類の体色変化は、筋繊維によって色素胞内にある色素の入った袋(弾性小嚢)が広がることで生じる。
(※2)バイオアート
狭義では、分子生物学や遺伝子工学などのバイオテクノロジーを表現手段として利用した最近の芸術動向を指すが、より広くは生物(学)や生命観を主題とした芸術一般を指す場合もある。本研究では後者の観点から議論を展開した。
(※3)バイオ・フードラボ
バイオテクノロジーと食の可能性をデザインの観点から探る教育・研究拠点。遺伝子解析装置を始めとした実験機器および調理可能な厨房を備えている。2019年3月に九州大学大橋キャンパス旧学生食堂厨房跡を改装して開設。

詳細

プレスリリースをご参照ください。

附属図書館貴重文物講習会(第44回)「武谷椋亭の足跡—武谷文庫からみる幕末福岡藩の医事」

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