ミトコンドリア分裂を促進する新しい因子を発見

医学研究院
古川 健太郎 助教

ポイント

・ミトコンドリアは分裂と融合を繰り返すことで機能を維持しています。そのため、ミトコンドリア分裂の仕組みを理解することは、医学・生命科学の観点から非常に重要です。
・これまで、ミトコンドリア分裂にはミトコンドリアの内側から作用する因子「マイトフィッシン(※1) Atg44」が必須であることが知られていました。しかし、Atg44だけで分裂が成立するのか、あるいは外側から作用する因子が存在するのかは明らかになっていませんでした。
・本研究では、Atg44と類似した機能を持ち、ミトコンドリアの外側から分裂を促進する新たな因子として「マイトフィッシン2(Mfi2)」を発見しました。
・ミトコンドリアの分裂機構の解明は、その異常によって生じる様々な疾患の病態解明や治療法開発につながるものと期待されます。

概要

不要な、または損傷したミトコンドリアを選択的に除去するマイトファジーは、ミトコンドリアの品質管理のための重要な仕組みです。近年、私たちはミトコンドリア内部 (膜間腔スペース(※2)) に局在するマイトフィッシンAtg44を発見し、これが脂質膜に直接作用して分裂を促進する機能を持ち、また、マイトファジーが起こる際のミトコンドリア分裂にも必須の因子であることを明らかにしました。しかし、ミトコンドリア分裂がAtg44のみで十分に成立するのか、あるいは外側から作用する因子が存在するのかについては不明のままでした。

九州大学大学院医学研究院の古川健太郎助教、神吉智丈教授、微生物化学研究所の丸山達朗上級研究員、横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科の境祐二特任准教授、新潟大学大学院医歯学総合研究科の福田智行准教授、北海道大学遺伝子病制御研究所の野田展生教授らの研究グループは、ミトコンドリア外膜に局在し、Atg44と似た膜切断活性を持つ新しい因子としてマイトフィッシン2 (Mfi2) を発見しました。Mfi2はAtg44と同様にマイトファジーにおいて重要な役割を果たし、さらにダイナミン様タンパク質(※3)Dnm1とは独立してミトコンドリアの分裂を促進することが明らかとなりました。本研究により、マイトファジーに伴うミトコンドリア分裂には、ミトコンドリアの内側と外側に局在する2種類のマイトフィッシンが必要であるという新しいモデルを提唱しました。

今回の研究成果は、ミトコンドリア分裂の研究におけるブレイクスルーとなるだけでなく、ミトコンドリア異常に起因する様々な疾患の病態解明や治療法開発への貢献が期待されます。

本研究成果は、国際学術誌「EMBO Reports」に2026年1月13日(火)午後7時(日本時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) マイトフィッシン
ミトコンドリアの膜に直接作用し、膜を切断することでミトコンドリア分裂を促進するタンパク質です。Atg44およびMfi2は、このような性質を持つことから「マイトフィッシン (mitofissin: mitochondrial fission protein)」と総称されます。

(※2) 膜間腔スペース
ミトコンドリアは、外膜と内膜の二重膜構造を持ち、その間の領域である膜間腔スペース、内膜に囲まれたマトリクス、内膜のひだ状構造であるクリステから構成されています。Atg44は膜間腔スペースに局在し、ミトコンドリアの内側から分裂を促進します。一方、本研究で発見したMfi2は外膜に局在し、外側から分裂に関与する点が異なります。

(※3) ダイナミン様タンパク質
ミトコンドリアを外側から取り囲むようにリング状に集合し、GTPの加水分解エネルギーを利用して分裂を促進するタンパク質です。酵母ではDnm1、哺乳類ではDrp1が代表的な因子として知られています。

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お問い合わせ先

医学研究院 古川健太郎 助教
医学研究院 神吉智丈 教授

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