ダイレクトリプログラミングによりニューロンを新⽣、脳梗塞後の機能回復に成功

~ 新たな神経疾患治療法開発に期待 ~

ポイント

・脳⾎管疾患はしばしば後遺症を起こし、介護が必要になる主たる原因疾患となっています。
・本研究では、ミクログリア/マクロファージからニューロンへのダイレクトリプログラミングにより、脳梗塞モデルマウスでの損傷後の神経機能を回復させることに成功しました。
・失われたニューロンを補充することができる、全く新しい神経疾患治療法の開発の⼀助となることが期待されます。

概要

 脳⾎管疾患は、しばしば重度な後遺症を起こしたり再発したりして予後不良なことがあり、介護が必要になる、主たる原因疾患となっています。脳⾎管疾患の7 割以上は脳梗塞であり、傷害された脳の修復には、失われた神経細胞(ニューロン)を補充するために新しいニューロンを⽣成することが理想的ですが、成体哺乳類の脳には限られたニューロン新⽣能⼒しか保持されていません。
 九州⼤学病院の⼊江剛史医員と同⼤学医学研究院の松⽥泰⽃助教、磯部紀⼦教授、中島欽⼀教授らの研究グループは、脳内のミクログリア(※1)を直接ニューロンに分化転換すること(ダイレクトリプログラミング)が、脳梗塞の治療戦略として⼤きな可能性を持つことを明らかにしました。
 本研究グループは、ミクログリア/マクロファージからニューロンへの直接分化転換により、脳梗塞モデルマウスでの損傷後の神経機能を回復させることに成功しました。成体の局所脳虚⾎モデルマウスにおいて、ニューロンの消失が顕著であった梗塞中⼼部にミクログリア/マクロファージが集積しており、このミクログリア/マクロファージに神経誘導性転写因⼦NeuroD1 を発現させると、既存の神経回路に機能的に組み込まれるニューロン(induced neuronal cell : iN 細胞)への分化転換が可能になりました。
 さらに、NeuroD1 を介したiN 細胞の⽣成は、局所脳虚⾎モデルマウスの神経機能を著しく改善し、この細胞を除去すると、得られた機能回復が無効となりました。このように、ダイレクトリプログラミングによって新⽣されたニューロンが直接寄与し、脳梗塞後の機能を回復できることが明らかになりました。
 本研究成果は国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に2023年10⽉10⽇(現地時間)に掲載されました。

用語解説

(※1) ミクログリア
グリア細胞の1 種で脳内では唯⼀の免疫担当細胞。脳内・脳外の環境変化に⾮常に敏感で、それらを感知すると即座に⼤きく変化して、病気の発症や進⾏を先導する役割を果たしている。ミクログリアは、成体脳において⾼い増殖・再⽣能を維持しており、枯渇することがないことが分かっている。ただし、発現している遺伝⼦は別の免疫細胞マクロファージと⾮常に似ているため区別が難しく、ここではミクログリア/マクロファージと記載している。

詳細

詳細は九州大学プレスリリースをご参照ください。

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